想像力の限界を求めて

『シン・ゴジラ』感想。これはハリウッドでは絶対に作れないであろう怪獣映画だ

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恐らくこれは日本でしか作れない。

ハリウッドがどれだけお金を積んでも作れないだろう。これは日本人でなければ造れないし、日本人が作らなくてはいけない作品です。

ついに観てきました『シン・ゴジラ』。

立川の極上爆音上映にて終始全身に鳥肌を立てながら鑑賞。朝一の会だというのに会場は満席、エンドロールが全て流れきり「終」の文字が出るまで誰一人席を立つ人はいませんでした。そして勿論終了後には一斉に拍手が起こりました。

ゴジラが遺した爪痕はきっと観客の脳裏にまで深く刻んでいたのでしょう。

【極上爆音上映】あります
 ベテラン音響家による綿密な調整を施して今作にふさわしく大音量で上映します。
 ただヴォリュームを上げるだけでなく、それでいてやかましくない、クリアな台詞と音楽を両立させるのが「極上爆音上映」。
 ゴジラを目の前にしたときの体感。音のリアリティに引き込まれる没入感。
 シネマシティは【極爆】によって「震・ゴジラ」を目指します。立川シネマシティより

今日はエヴァ好き、庵野秀明好きのワタシが『シン・ゴジラ』の感想をネタバレ注意で書き殴っていきます。

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日本人だからこそ作ることが出来た『シン・ゴジラ』は間違いなく傑作だ。

まず先に言っておきます。まだ観ていない人はあらすじすら知る前に観たほうが良いです。何も予備知識を入れずに、この衝撃に襲われて下さい。下手に色々前情報を入れていくよりダイレクトにこの衝撃を体験したほうが良いと思います。

今回は一度観てきた人と語り合いたいなという気持ちで書いております。

なのでいきなりですが以下閲覧微注意で始めましょう。

あらすじ

東京湾羽田沖で突如謎の水蒸気が噴出、その海底を走る東京湾アクアラインも同時に陥没事故が発生。政府は急遽事故の原因を調査し海底火山の可能性で対策会議を進めていく。内閣官房副長官はネットに投稿された事故映像から巨大生物の存在を確認、会議で進言するも馬鹿にされ流されてしまう。しかしそのタイミングでテレビニュースに映しだされた巨大な尻尾。固まる会議室‥虚構が現実となった時、日本政府と巨大生物との一進一退の熾烈な攻防が始まる。果たして日本は無事現実に戻れるのか?

今回は先にも触れた通りあまり詳しくあらすじも書きませんでした。やっぱり一回観た人同士であーだこーだ言いたいなという気持ちが強いので‥

『シン・ゴジラ』、傑作だと認めざるを得ない3の理由。

あらすじも程々に早速この作品が近年稀に見る邦画であり、素晴らしい作品だと認めるしかないであろう理由を稚拙ながら説明させてもらいます。そしてこの快作がなぜ日本人にしか作れないのか?ハリウッドでは制作不可能だと思ったのかという結論に到ったのかを。

1 テンポ

続々と出てくる登場人物に被さるようにあの明朝体でのテロップによる文字情報。このテンポがかなり早い。

もう説明する気はないんでしょうし、登場人物たちの名前だって覚えさせるつもりもないんでしょう。徹底的にストイックな展開はひとすら変化していく事態だけを追求しており、そこに無駄なドラマが入り込むことを巧妙に回避しています。

良くありがちな主要キャラクターたちの背景がほとんど描かれません。妻子の存在を匂わせる描写はあるもののそこに言及することはありません。

そして今作の見所の1つである会議シーン。

これもまた非常にテンポ良い。

無駄な会議をテンポ良く描いており、これがなんとも日本人ならではだなあと感じました。

無駄なことを効率良くやり続けるというか‥皮肉いっぱいのテンポの良さ。

トップが変わったり、登場人物が減っても過剰に悲しまない。とにかくテンポ良く進行していきます。

大量のコピー機、パソコンがテンポ良く並べられてあっという間に会議室が完成するシーンは圧巻です。

2 日本人的集団性

この作品が日本人にしか作れない、何よりそう思わせたのがこの姿勢です。

怪獣が突如襲ってきた時に、ヒーローが立ち向かうのではなく集団として向き合う。この姿勢です。

ハリウッドお得意のヒーローイズムは一切排除され、とにかく最初から最後まで日本人という集団とゴジラとの闘いが描かれます。

政府としての対策、自衛隊という集団、一応主役である矢口でさえ、ラストの闘いでは防護マスクで顔を隠しひたすら個が突出しない。

ヒーローはいない。

しかしみんながヒーローだ

この極めて日本人的な文脈だからこそ、この作品はここまでのヒットに繋がったのだと思います。

マッチョな人たちが傷だらけになりながらも愛する家族を守る、自分の家族を守る、アメリカ万歳みたいなの、一切ないんで。

研究者や政治家、冴えないスーツ姿の対策チーム員たちが力を合わせる。みんなで立ち向かう。これ。

3 自衛隊というリアル

まるで非常事態が起きたら日本政府はどんな解釈をしても自衛隊を使うし、国内でも武力行使するのだという暗示なのか?そんなことを思わせてくれます自衛隊の描写。

これがかなりリアル。

伝言ゲームのような司令のやり取りや実際の銃火器しか出てこない設定もリアルですし、戦略も緊迫感があって良かったです。どんどん口径の大きな銃弾にエスカレートしていくのが個人的に興奮。

やっぱ自衛隊っていうのがポイントですよね。

これが米軍とかだと軍隊としても火力としても強すぎちゃうイメージがあって、なんかいきなり最後の王手をぶち込んできそうだしね‥

でそれもダメで結局最後にヒーロー出てきて退治‥みたいな。

ここでも個としてのヒーローではなく、あくまで集団としての自衛隊。みんなで立ち向かうぞっていう。しかもみんな正義感に駆られてとかじゃない。

仕事ですから。

って。

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『シン・ゴジラ』は震災の呪い?エヴァの呪縛?を解き放てるか?

どれだけ語りたくても語り尽くせない、それが『シン・ゴジラ』の魅力であります。ここからはワタシの個人的解釈、考察をしたいと思います。あーこんな気持ち、初めてエヴァを観た14歳以来かもしれない‥

まずこの作品が非常にリアルにあの日を描いていることは誰が観ても一目瞭然です。

それは

3・11 東日本大震災

東日本大震災があったあの日、河川にボートや家やら瓦礫が大量に押し流されていく映像をテレビで観た衝撃。あれが再び再現されているのです。正直冒頭からすごいな‥って、やって良いのかって。

だってあの日以来、ワタシたちは例え作りモノであったとしても津波や災害を描くことに対して自制することを暗黙のうちに課せられてきたのですから。あのポニョでさえ放送日を調整させられたのですから。

その禁断のテーマを堂々と真正面から扱った庵野秀明。

さすがにその他大勢として住人たちの死を描くことは避けていましたが‥

かつてエヴァ劇場版の広告にて「みんな死んじゃえばいいのに‥」という強烈なメッセージを突きつけた人がゴジラというメタファーを用いてこのテーマに切り込んだことに感動すらしました。

しかしこれは両刃の剣であります。あの震災の呪いは現実にはまだ終わっていません。

原子力、被爆、風評被害に被災地復興、そしてもし東京であの規模の災害が起こった時にどう対応するのかという課題。

あの日を境にワタシたちは震災の呪いのようなものに憑かれているのです。

今作品ではかなりリアルにその呪いの一部始終を描ききっています。

対応する日本政府の混乱ぶり、収拾どころからどんどん悪化していく状況。コントロール不能なゴジラは福島第一原発そのものであります。そのゴジラの活動を停止させるべく立案された作戦はまさにヘリで海水を浴びさせたあの作戦を想起させます。

敢えてここまで徹底的にあの恐怖を描くことで『シン・ゴジラ』はただの怪獣映画ではなくなりました。

またいつ活動再開するか分からないゴジラを前に、これからは共存していくしかないんだという科白が非常に印象的でした。ワタシたちの日常も、考えてみれば大地震と共存しているようなもんですからね。

そしてもう一つこの作品には庵野秀明ならではの側面が存在します。

それが

エヴァンゲリヲン

やはり庵野秀明作品と言えばこのエヴァンゲリヲンが有名です。

今回の『シン・ゴジラ』、色濃くエヴァ出てました

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アングル

まずなんと言ってもアングル。電柱や信号などと巨大生物とを対比させる構図はあまりにエヴァ。さらに自衛隊のずらりと並んだ戦車や、ヘリの機銃シーンはエヴァ好きとしてはかなりニンマリしてしまいます。しかしこの迫力たるは実写なだけにエヴァを超えたかも‥

正体不明の巨大生物が理由も分からず東京を目指す

これは使徒と同じですね。突然現れて自衛隊の総力をあげた攻撃がまったく効かず、今回は米軍でしたがより威力の高い爆撃を喰らわせて一時活動停止にさせるその流れもまさに同じ。

そして解析を続けて分かったゴジラ存在の秘密。

人智を超えた完全な生命体、神‥って来たらやはり使徒を連想しますよね。

ゴジラの光線はヤシマ作戦の描写に酷似しているし、そもそも最後の作戦「ヤシオリ作戦」はこのヤシマ作戦そのものでしたね。都市から人が疎開するシーンや、全国のエネルギーを一箇所に集める場面はエヴァ好きにはかなりぐっとくる描写です。

二人の女性キャラクター

今回『シン・ゴジラ』ではヒロインが二人登場します。

一人は石原さとみ演じるカヨコ・アン・パターソン。そしてもう一人が市川実日子演じる尾頭ヒロミ。英語を交えながら会話するカヨコはアスカそのものですし、淡々と感情抑揚のない科白まわしのヒロミはレイそのもの。

またあのお得意の明朝体でのテロップはこれでもかと凄い勢いで流れますし、お決まりの戦闘曲としてエヴァサントラから引用されていますね。勿論音楽はあの鷺巣詩郎氏。

ここまでくると庵野秀明という監督はエヴァでもそうでしたがこの設定から巨大生物の襲来という冒頭を描かせたら天才的な采配を振るうことが分かりますね。後はエヴァンゲリヲンをうまく結末まで完成させることが出来たら誰も文句は言わないのでしょうが‥

そう思うとこの『シン・ゴジラ』はエヴァの再確認をしているようにも・・未だにエヴァの呪縛から解放されていないんでしょうね。

だからこそ余計に劇中のキーワードが心に染みる‥

「私は好きにした 君たちも好きにしろ」ってね。

今までのゴジラシリーズへの敬意

今回ここまで評価が高いのは制作者たちの今までのゴジラに対する愛が詰まっているように感じられるからだと思います。特に影響を受けた作品を隠すことなくオマージュしてくるスタイルの庵野秀明ならではの芸の細かい敬意が感じられました。

こういう姿勢が大事ですよね。

過去のファンを裏切ることなく、スクラップ&ビルドするって。

オープニングのGLORY MARUという船は初代ゴジラで最初に襲われる船の名前・栄光丸の英語表記でしょうし、過去のゴジラシリーズで流れた音楽をアナログのまま使用したり、東京の名所をぶっ壊し散々蹴散らし、噛み砕いた在来線電車の被害は今作でも健在。

しかし無人在来線爆弾とは‥すごい痛快でした。食べられた電車の弔い合戦です!

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ラストシーンで、我々は常に再建してきたという会話のやりとりがありました。

これはまさに戦後についても言えるでしょうし、津波、地震についても言えます。そしてこのゴジラシリーズに対して今までの敬意を払いながらもまったく新しいモノを作り上げたということ。

停滞感、閉塞感といったものがとても漂う今の情勢の中でなんだか最後に素晴らしいメッセージを残した『シン・ゴジラ』。確かに突っ込み所が無いわけではありません。結局はゴジラという素材を使ってやりたいようにエヴァをやっただけのような気もしなくはありません。

しかしはっきり言ってここまでドキドキした作品は近年ありませんでした。まさに久しぶりに味わった傑作です。

緊急事態へのシミュレート、リアル過ぎる災害としてのゴジラ、かの震災へのレクイエムとしてこのゴジラは新しい歴史を作ったと思います。

しかし最後の最後で庵野秀明らしい憎い演出が用意されてますよ。

思わずニヤリとせずにはいられません。

是非劇場で確認してみて下さい。

 


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