映画『天才スピヴェット』誰かにそっと話したくなる物語

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安心して観れるロードムービー、だけど用心してください。

ここには決して【普通の人】は出てきませんので。

普段は人が過剰に死んだり救いようのない物語だったり、映画としてはちょっと暗すぎるんじゃないかと思うほどの作品を好んで観ているワタシです。

だから最初は特に意識して鑑賞を始めたわけではなかったのですが…

絶妙に暗いトーン、少年の思考が具現化していくときの見事な表現手法、そして孤独の少年

この三拍子揃った瞬間心を鷲掴みされ、最後まで釘づけとなりました。

鑑賞後のクレジットで【ジャン・ピエール・ジュネ監督】の名前を見て納得。

そう、妙に納得したのであります。

今日は奇才ジャン・ピエール・ジュネ監督の『天才スピヴェット』の感想を。


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『天才スピヴェット』異端児が見た景色

そもそも『エイリアン4』の時からこの監督が放つ独特すぎるほどの強烈な個性というものをワタシは見せつけられてきたのですが、最初それはエイリアンシリーズという金字塔を背負ってしまった気負いからくるものなのか?と思っていたのですが‥

その感覚は『アメリ』によって見事に打ち砕かれました。

決して名作シリーズのプレッシャーから奇をてらっていたわけではなかったのです。

この独特のセンスは

本物だったのだと

『アメリ』はそういう意味ではジャン・ピエール・ジュネの良さがすべてにおいて機能していた作品でした。

時にブラックな笑いを織り交ぜながら独特の映像センス

そして素晴らしい役者たちに恵まれ、あのファンシーな原作を見事にまとめあげていました。

ちゃんと自分の色が出せる稀有な監督だということです。

そんなジュネ監督。

これまでの作品の特徴といえばやはり

変なキャラクターしか登場しない

という傾向があります。

さて、今作『天才スピヴェット』はどうでしょうか??

【あらすじ】

モンタナの牧場で暮らす10歳のスピヴェットは、生まれついての天才だ。だが、身も心も100年前のカウボーイの父と昆虫博士の母、アイドルを夢見る姉には、スピヴェットの言動が今ひとつ分からない。さらに、弟の突然の死で、家族の心はバラバラになっていた。

そんななか、スピヴェットにスミソニアン学術協会から、最も優れた発明に贈られるベアード賞受賞の知らせが届く。初めて認められる喜びを知ったスピヴェットは、ワシントンDCで開かれる授賞式に出席するべく、家出を決意する。数々の危険を乗り越え、様々な人々と出会うスピヴェット。何とか間に合った受賞スピーチで、彼は<重大な真実>を明かそうとしていた──。

『天才スピヴェット』見どころ。

今回も揃いも揃って変人たちが大集合します。

主役のスピヴェットは言わずもがな昆虫学者の母親に時代遅れのカウボーイな父親、アイドルを目指す姉に活発な弟。

旅の途中で出会う良い話してくれる不思議な老人とヒッチハイクに応えてくれたトラック運転手。追いかけっこする警官に虚栄心の高い教授。

登場人物が少ないわりにみんな濃い。

これはもはや安定感すら感じますね。

主演を演じるカイル・キャトレット。彼は本物の天才子役のようで6ヶ国語を操り、実際カイルの存在によって脚本が変更されたといういわくつき。アメリのオドレイ・トトゥといいやはり役者に恵まれてます。

この作品はそんなジュネ節溢れるキャラクターたちとの交流、そして成長というこれまでの系統に加え新たに斬新な挑戦をしています。

それは

視覚。

今作品最大の売りは【3D】であるということです。(ワタシは家のケーブルテレビで拝見したのでその恩恵は受けられず…)

パッと見ただのロードムービー

少年の成長物語

と思えますが、随所に少年の思考をビジュアル化させ、それを立体的に表現するのです。(何度も言いますがワタシは平面でそれを見ました)

『アメリ』でも主人公の妄想を視覚化しワタシたちにも彼女と同じ世界を見せてくれたおかげで、彼女が【変わってる娘】であることを分かりやすく教えてくれました。

物語上どれだけ丁寧に語られるよりも、映像として視覚的に訴えられたほうが伝わるもんです。

今作はそこがかなり凝ってます。

天才少年が見ているものをワタシたちも一緒に眺めることができる、この体験はなかなか面白いものです。

でぃすけのつぶやき まとめにかえて

安心して観れるロードムービー

やっぱりこういう作品は見終わったあとのこのほっこりした感じが何よりの醍醐味です。

天才スピヴェット君の異端児ゆえの孤独。

普通に叱ってほしい

接して欲しいのに家族もみんなどっか狂ってる

弟の事故死の真相だってそもそも時代錯誤の親父の教育方針が招いた悲劇なわけで、でもそこはまだ子供

自分に責任感じてしまうんです。

家出の朝、ちょっとした行き違いからスピヴェットは父親に完全に見捨てられたと思ってしまいます。

そこで彼は決心するんです。自分の本当の居場所を求めようって。

その旅で出会う人たちとの交流に心温まります。

終盤

天才少年の誕生に湧き立つ周囲、過熱するマスコミ

スピヴェットを取り巻く環境が劇的に変化し、異常な世界へ導かれていこうとした時、元の場所に連れて帰ってくれたのが、家族だったっていう

ほんと泣けるラストにやられました。

いやみんな天才じゃなくとも

異端で、変わってるんですよね。

1人1人、変わってるんですよ。

それを受け入れあうのが、家族なのかな?って。

 

個人的に、家出の準備でトランクに荷物を紹介しながら詰めるシーンが好きでした。


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