『雑司ヶ谷 R.I.P』感想。続編の難しさを感じて。

『雑司ヶ谷R.I.P』を読んで/disk本/映画/感想

あの『さらば雑司ヶ谷』の続編。

さて、その出来栄えはどうだったのでしょう?

ワタシは樋口氏の作品が好きです。

初めて『さらば雑司ヶ谷』を読んで

「こりゃ日本にもついにタランティーノばりの才能を持つ人が現れたか⁈」って感動したものです。

『雑司ヶ谷R.I.P』を読んで/disk

『雑司ヶ谷R.I.P』感想。

それから『民宿雪国』『テロルのすべて』、『ルックバックインアンガー』を読み漁り、そしてやっと手に入れたこの『雑司ヶ谷R.I.P』を読んだのですが…

確かに問題作ではありますね。。。

 

あらすじ

雑司ヶ谷の妖怪”こと、泰幸会教祖・大河内泰が死んだ。享年102。葬儀に参列するため中国から帰国した俺を待っていたのは、ババアが書き残した謎の遺書。教祖のイスと莫大な財産は俺の父親に譲るというが、親父ならとっくに死んでいる。ババアの魂胆は何か? 初代教祖の戦前戦後の過去と、二代目就任をめぐる抗争劇の現代が交錯する、衝撃の問題作「雑司ヶ谷」シリーズ第二弾。新潮社より引用。

続編の難しさ。

続編というのは非常に難しい。

これはもう小説問わず、クリエーションの成れの果て、人気作品に待ち受ける宿命のようなものです。

続編を出して成功した作品・シリーズは実はそう多くない。

これはワタシの個人的な意見ですが、続編を出して成功したシリーズはほんと片手で足りるくらいしかないと思います。

例えば映画『ターミネーター2』

これはクオリティ、スピード感、そして世界観を補完する上で成功した稀なケースと言えるでしょう。賛否あるもののさらに続編である3でさえ個人的には嫌いじゃありません。

例えば映画『エイリアン』

これもシリーズ化し、その都度監督を変え、実験的なスタイルはワタシは好きです。(評価はおいておいて)フィンチャー好きという色眼鏡がだいぶ強いですが‥

例えば映画『バックトゥザフューチャー』

これはもう駄文にて補足する必要ありません。シリーズ化して大正解。

 

…そうなんです、映画ならばまだしも小説において【続編】という試みが行われ、そしてそれが面白かったという体験を未だワタシは知らないのです。(単純に経験値が不足しているのが原因なのですが…)

映画は視覚からの刺激が強いため、技術の進歩とかも重なり続編がパワーアップしていくのは理解できます。

しかし小説となると、まず前作の情景を思い出すのに時間がかかります。これは想像力によって人それぞれでしょうが。

では、『さらば雑司ヶ谷』は続編で何を語ったのでしょうか?

読みどころ。

前作で抜群の存在感を示した主人公の祖母・大河内泰がどうやって巨大な権力と富を得てきたのか?という過去からの話と、その遺産相続を巡り、再び熾烈な争いに巻き込まれることになった主人公・太郎の話が交互に進行していきます。

泰のパートは戦前から現代までの闇の歴史を振り返りながら虚構とフィクションとが混在していく流れ。これは前作よりもむしろ『民宿雪国』の書き方に似ていますね。

そして現代の太郎のパートはそれこそ前作のテイストを世襲したやり方。今回もみなキャラが濃い。

特に今回は格闘技のテイストも加わり、より一層魑魅魍魎としています。

もちろんオザケンについて語ることは今回も忘れてません。

 

ですが……

 

何が言いたかったんだ⁈

 

冒頭述べたように、【続編】と言うのは非常に難しいのです。それが最初から構想されていた続編ならばまだしも、売れたから・人気が出たからとりあえずやってみた系はことごとく失敗するのです。

例え読者が望んだとしても、構想なき続編は失敗してしまうものです。

今ワタシは大好きなシリーズ『ミレニアム4』を心配していますが…

今作において、ワタシが感じたことはただ一つ。

 

 

ホントに何が言いたかったんだ⁈

 

確かにキャラクター造形は相変わらず面白いし、雑学、サブカルチャーからの引用やモチーフに関しては思わずニンヤリしてしまう箇所も多く、読んでいて楽しいのですが…

 

結局何が言いたかったんだ?

 

サブカルチャーとポップな雑学を暴力的に散りばめて、大風呂敷を広げたは良いのですが綺麗に畳む姿勢すら見せないまさかの展開に、このボリュームで書き上げたのに何が言いたかったのかわからないという難しい仕上がりに。

もちろんワタシの読解力の無さにも原因はあるでしょう

しかし氏の他作品も通して読んできただけに何か腑に落ちない仕上がりでした。

そして極めつけは巻末の「図書館問題」。

氏の主張は何も間違っていないし、自分の作品の最後に自分の主張をすることも間違っていません。

しかし巻末の書評、作者あとがきのコーナーは作品を読み終えた者の余韻の時間というか、静かにこの作品の感想を頭の中で嚙みしめる時間に使ってきたワタシにとって、作品とはまったく関係のない作者の事情を主張されるのは正直うまく処理できませんでした。

ただでさえ今作はその仕上がりをどう捉えるべきか?を考える時間が欲しかっただけにもったいないなと。

ちょっと辛口に〆ましたが、それはやはりそれまでの作品がホントに素晴らしかったから。

これからも期待してます。

もちろんワタシはちゃんと買って読んでいますよ。

 


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