平山夢明の『DINER』ダイナーがヤバイ。

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『DINER』を読みました。

 
先に言っておきますが
これはメチャクチャ面白いです。ただし読む側も本気でとりかからないとやられてしまいますので、ご注意を。
 
平山夢明氏の作品はかなりきわどいモノが多いです。
『独白するユニバーサル横メルカトル』や『メルキオールの惨劇』で圧倒的な世界観を発揮しております。
未読ならこの二冊はチェックした方が良いかと。
 
 
 
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『DINER』 危険なエンターテインメントと潔さ。

とにかく危険な暴力描写の数々に目を奪われがちですが、この作品はしっかりエンターテイメントしてます。本気を感じるエンターテイメントです。映像化出来ない内容ですが‥

あらすじ

 
主人公オオバカナコは、ほんの出来心から闇サイトで見かけた怪しい話に乗ってしまう。危険なアルバイトは見事に失敗し、壮絶な拷問を経てある会員制のダイナーへ売られそこでウェイトレスとして働くことに。
 
しかしそこはプロの殺し屋だけが通う危険な食堂だった…
 
暴力描写は相変わらず凄いものがあります。
冒頭の拷問シーンはその手に耐性が無いと読むのが辛いかもしれません。つまりこの面白い物語を味わうことが出来なくなってしまいます。
 
また巻末に作者自身の言葉が載っております。
そこで単行本と文庫本とで改編があるようですが、ワタシはまだ文庫本verしか読んでおりませんので悪しからず。
 
女性の一人称で語られている物語とは思えない程、残酷なフレーズや暴力描写の数々。
次第に加速する物語。
そんな狂った世界の中で成長(?)してゆく主人公の姿を見て内容とは遠い熱い気持ちを感じることでしょう。
 

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各章で登場する不気味だけど魅力的なキャラクターの造形

 
どのキャラクターも危険です。
まともな人物は出てきません。
 
皆一癖も二癖もある殺し屋で、束の間の休息を得るためにダイナー・キャンティーンにやってきます。
 
タランティーノ風な科白で決めるイカれたカップル。
 全身傷だらけのスキンに、スキンヘッドのブロウ
人体改造で子供の外見を手に入れたキッド‥
 
序盤だけで立て続けに出てくる狂人たち。
彼らの造形がただメチャクチャしているだけではなく、しっかりと人間的な部分を垣間見せるので余計に不気味さが表現されています。
 

物語の設定にインパクトがありますが。

 
会話の内容も凄ければ人間の生死を簡単に扱うプロ達の描写もまた凄いものがあります。
 
残酷なディテールを生々しく描いているので、どうしてもインパクトがある部分ばかりに気を取られてしまいがちですが、それを一気に読ませてしまうしっかりとしたストーリーがあればこそ。
 
物語として面白いんです。
こういうと語弊がありますが、笑いあり涙ありの王道アクションかつ恋愛(?)要素ありの一級エンターテインメント作品だと思っています。
 
簡単に拷問やら解体やら始まりますが…
 
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シンプルライフを目指しているワタシ的見解。

 
エンターテインメント作品として楽しめる作品ですが、ワタシがこの作品に魅かれる要因はシンプルライフを目指しているからこそ、の部分でした。
 
何もかも捨てて始めることの潔さ。
  
主人公オオバカナコは文字通り、何もかも捨てた状態でキャンティーンに連れてこられました。
それが自分の意思でなかったことは明白ですが、何も持たずに新しい環境で新しい事を始めることになります。
 
与えられたのは制服一式のみ。
 
この潔さ。
 
そしてワタシがこの作品で気に入っている科白
 
「掃除だ。流しから始めろ。道具は下の物入れにある。スポンジだけは使い捨てにして良い。いいか、全て舐められるぐらい、きれいにするんだ。
忘れるな、それがお前の命綱だ。」
 
「ここに在る物はすべて、おまえが今まで買ってきた同じ物の数十倍の値段はすると思え。〈中略〉ここにあるものは程度の差こそあれ、すべてが相応の歴史を持っているということだ。俺は、おまえが手にしているディナー皿がいつ、どんな時に使われていたのか思い出すことができるのだ。」
 
 
徹底的に掃除をさせられる序盤のシーンでこれらのやりとりがあるのですが
 
物に対する思いや考え方に魅了されました。
 
平山夢明氏の作品にはある種のプロ意識のようなものが根底に漂っているように感じる時があります。
ワタシはそれをたまに触れたくなってしまいます。
 
それはとても怖い容れ物に入っておりますが…
この怖さ、癖になります。
 
別の機会にと、この『ダイナー』という作品が放つプロフェッショナルさについて書いた記事もありますので合わせてどうぞ。
 
 
 

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コメント

  1. […] 平山夢明の『DINER』ダイナーがヤバイ。 […]

  2. […] またしても平山夢明さんの小説になります。 前回『DINER』を読んだ時も、あまりの面白さに一気に感想を書き上げましたが、今作品もぶっ飛び具合でいったら負けず劣らずです。 […]

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