『シャトゥーン ヒグマの森』で恐怖体験。
ワタシにはヘンテコな妹がいるのですが、それがやたらと動物好きでして。動物といっても犬とか猫っていうよりもワニとかクマとか巨大な方。アニマルプラネット的思考回路がより一層彼女の不思議さと醸し出すのに一役買っているのは言うまでもありません。 話がだいぶ逸れたところからのスタートですが、読み終えた本の衝撃さと相まって不思議な出だしとなりました。
『シャトゥーン ヒグマの森』増田俊也著 を読了しました。
今回もネタバレも勝手に脳内キャスティングもしません。というかやっぱりクマが主役級にインパクトがあって、さらに物語もモンスター・パニック的な要素が強くて脳内で再生する余地がありませんでした。
簡単にあらすじ。
マイナス40度も珍しくない極寒の北海道。その土地にある小屋で楽しく年越しをしようと集まった学者仲間たちがいました。パーティーの準備もそこそこにただただ楽しもうと集まったメンバーたちを待ち受けていたのは凶暴化したヒグマでした。次第に破壊される小屋、メンバーたちもどんどん犠牲に‥孤立無援の状況から抜け出すことは出来るのでしょうか?
とあらすじを書いてみて思ったのですが、そうなんですよね。
もうこのまんまなんです。
物語はただひたすらヒグマの襲撃を描いているだけなんです。
だけど、それがものすごく怖くて、スリリングで一気に読み終えてしまいました。それくらい緊張感に満ちています。
ワタシ的みどころポイント。
タイトルにあるシャトゥーン(穴持たず)とは、秋に食い溜めに失敗し、 冬眠せずに飢えて雪山を徘徊する凶暴なヒグマ。こいつが暴れまわる今作品のみどころを書かせていただきます。
とにかく執拗で容赦無いヒグマ。こいつの怖さは凄いものがあります。作中詳細にヒグマの習性が説明されていて、こういう学問的な情報が余計に恐怖を煽ってくれます。特にこの作品の恐怖には3つの軸があってそれが
- ヒグマの本能
- 北海道の寒さ
- 人間関係の脆さ
この3本が恐怖という感情によってどんどんグチャグチャになっていく様はかなりみどころです。
ヒグマも寒さもどうしようもないモノ、絶対的な存在として襲いかかってくるのに対して、閉じ込められた人間関係の壊れやすさ、脆さが心に染みました。
更にもう一つ挙げたいのが、物語終盤で主人公の娘に生きる為に動物を捌き与えようとするシーンがあります。極限状態で生きるために行うこの行動と日常生活とのギャップに涙する娘。この場面は非常に考えさせられるものがありました。
複雑な展開がある訳でもないし、よくあるパニック物と捉えることも可能な本作品。しかしここには人間の傲慢さ、自然の持つあまりに強烈な強さが恐怖に変わる瞬間がこれでもかと描かれています。
なんだか『もののけ姫』が目指していた自然との共存が霞んでしまうほどのインパクトがあります。
強烈でした、ヒグマ。
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