『さらば雑司ヶ谷』樋口毅宏は日本のタランティーノとなるか?

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バイオレンスとエロとグロ、サブカルに満ちたノワール小説(?)。

そんな、まるでばくだん丼のような作品を探しているならこの小説を。

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『さらば雑司ヶ谷』樋口毅宏氏は日本版タランティーノの到来か?

 
マドンナのLike a virgin についてむさいオトコ達が語り合う。
ふざけ合い、罵り合い、ファミリーレストランのような場所では別に違和感を感じさせない会話の内容だし、あって然るべき話題と言えばその通りであります。
 
ただ一つ間違いがあるとすれば
その話題に花を咲かしている人たちはこれから銀行を襲うということだけです。
 
そうです。
名作『レザボア・トッグス』のこれまた有名な冒頭シーンです。ワタシはこの作品で一番このオープニングが好きです。
 
中学生の頃にこれを見て、こんなにカッコいい映画は他にないと深く心に刻んだ作品です。今もその思いは刻まれてオリマス。
 

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 さて、今回はその名作について感想を書くのではありません。まったく関係のないある日本の作品について少し想いを綴ってみたくなりました。
 
と言うのも、その作品があまりにワタシの心に刻んである作品を想起させるからです。
 
『さらば雑司ヶ谷』 樋口毅宏著
 
前置きが長くなりましたが、最近読んだこの作品。
『さらば雑司ヶ谷』がなかなかワタシの心を揺さぶったので感想をこのブログに記録しておこうと思いました。
 

あらすじ

 
中国から久しぶりに戻った俺を出迎えた友の死。東京、雑司ヶ谷。大都会に隣接するこの下町で俺は歪んだ青春を送った。町を支配する宗教団体、中国マフィア、耳のない男……。狂いきったこのファックな人生に、天誅を喰らわせてやる。エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作、ついに文庫化。脳天、撃ち抜かれます。(「BOOK」データベースより)
 
『レザボア・トッグス』と『パルプフィクション』、さらには『不夜城』と『IWGP』を混ぜ合わせたような内容であっという間に幕を閉じるこの稀有な物語。
 巻末に作者自身がリスペクトしている作品としてもれなく言及しているあたりが非常に潔かったです。
 

タモリのオザケン論。

オザケン話だけでも読む価値あり。

 
はっきり言って作品自体はそれほど完成度は高くないし、かなりなご都合主義と思わす笑ってしまいそうになる古臭い感じが蔓延しているため、手放しで大絶賛‥とはいきませんがこれがワタシをガシっと捕らえてしまったのです。
 
あるパートが抜群に素晴らしいのです。
 
音楽談話をダラダラと繰り広げているシーンがあります。主人公が地元に帰ってきて、かつての知人たちを訪ねる場面です。
 
そこにタモリのオザケンに対する言葉を引き合いにポップミュージックの核心に迫るような会話が突然始まるのです。
 
 
「むかし、いいともにオザケンが出たとき、タモリがこう言ったの。
『俺、長年歌番組やってるけど、いいと思う歌詞は小沢くんだけなんだよね。あれ凄いよね<中略>俺、人生をあそこまで肯定できないもん』って。あのタモリが言ったんだよ。四半世紀、お昼の生放送の司会を努めて気が狂わない人間が!」
 
「タモリが気が狂わないのは、自分にも他人にも何ひとつ期待をしていないから。そんな絶望大王に『自分にはあそこあで人生を肯定できない』って言わしめたアーティストが他にいる?」
 
そして、小沢健二の歌詞を引用し最高の音楽とは何かを語り合うこのシーン。
 
最高に面白い。
 
そうです。
これはワタシが若かりし頃にどハマりした音楽談話を思い出させてくれるのです。朝まで飲みながら答えのない論争に明け暮れる。
 
学生時代の良き思い出です。
大学生というモラトリアムの中でアタマばかりでっかくなって覚えたての知識をさらけ出したくてしょうがなかったあの頃。
 
物語自体はとてもリアリティーのあるものではないのですが、このシーンでワタシはやられてしまいました。
 
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暴力的なほどのキャラクター設定

ワタシはどちらかというと目も背けたくなるような物語が好きです。

最低で最悪な話の方が何故か身に沁みます。これがワタシの想像力を感化させてくれます。

ファミリー向けで大衆娯楽で、前向きな作品だって嫌いじゃありません。意外と涙もろいのですぐ反応します。

今作品はどう読んでも大衆向けではないし、読み終わった後に感動が押し寄せるタイプではありません。話だって印象に残るようなものでもないかもしれません。

しかしここに出てくるキャラクターたちは皆面白い。

現代の耳なし芳一に始まり、脇を固めるキャラが濃いんです。以前平山夢明氏の『ダイナー』の感想を書いた時も思ったのですが、登場人物の濃さが物語を凌駕する瞬間が好きです。

丁寧に入り組んだ筋書きを読むのも好きですが、今作のように物語の進行をかすませてしまうほどの濃いキャラクターたちが好き勝手する話がワタシは大好きです。

しかしタモリのくだりは最高でした。。

 

平山夢明の『DINER』ダイナーがヤバイ。[browser-shot url=”https://diskdisk.link/diskdisk-diner-book2″ width=”600″ height=”450″ target=”_blank”]

 

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