柳楽優弥の怪演光る『ディストラクションベイビーズ』暴力が意味するものとは?

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映画『ディストラクションベイビーズ』

いやー柳楽優弥の怪演ったらすごいのなんのって。

以前『ワールド・イズ・マイン』って漫画を絶賛した記事を書きましたか、その時に主役のモンちゃんは絶対に柳楽優弥に演じて欲しいって書いてましたが…この監督もかなり意識しているようですね。

さて、もう言いたいことは言ってしまった感もありますが本作の感想を述べていきます。

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『ディストラクションベイビーズ』暴力の先にあるものは何か?〈ネタバレ注意〉

予告編が流れたときは「これ絶対に見よう」って思ってたのに気がつけばもうこんなにも時間が過ぎてしまっていて、、申し訳ない気持ちでAmazonビデオで鑑賞しました。

何せ『ワールド・イズ・マイン』、それから『決壊』とかのテイストが大好きなワタシなのでこの作品もきっとドンピシャだろう?って思ってました。

ただ観ていくとどうやら雲行きが怪しくなってきて…?


あらすじ

愛媛の小さな港町・三津浜の造船所で暮らす泰良と弟の将太。いつもケンカばかりしている泰良は、ある日突然、町から姿を消し、松山の中心街で強そうな相手を見つけてはケンカを売るようになる。そんなある日、裕也という青年から声を掛けられた泰良は、裕也と一緒に通行人に無差別に暴行を加え、車を強奪。その車に乗りあわせていた少女・那奈も巻き込んで松山市外へと向かう。映画.comより引用

暴力をテーマに扱うとき、観る人はそこに何を感じるべきなのか?

暴力をテーマにした作品は数多く存在します。

それはつまり人間には誰しも「暴力性」が備わっていて、そことどう折り合いをつけるのか?っていう人類の宿題めいたものなんでしょうね。

だから暴力をテーマに、どうやって昇華させるのか?っていうのがこの手の作品のテーゼでもあるのですが、最初はやたらと映像的な「痛さ」とか「インパクト」が先行している感もあります。

問題はワタシたちがどう捉えるか?な訳です。

『ファイトクラブ』では観客側の主役(エドワード・ノートン)が暴力を軸に暴走していく集団に嫌気が差し、物語側の主役(ブラピ)と対峙することでワタシたちにも制御できない暴力性に対して嫌な感じを抱かせました。

(まぁあの名作はほんとのところ「暴力」がテーマではないのですが…)

過去記事

読まずに死ねるか!『ザ・ワールド・イズ・マイン』という漫画界最強の黙示録。

『ファイト・クラブ』が持つ断捨離要素。

さて今作では果たして「暴力」はどのように機能しているのでしょうか?

『ディストラクションベイビーズ』の暴力が描くもの

ワタシはこの手の暴力的な作品に耐性があると思っていますが、それでもこの作品にはすごい「嫌な感覚」を抱きました。

冒頭から飛ばします。

柳楽優弥演じる泰良がひたすら喧嘩に明け暮れます。やられてもやられても勝つまでやる。

執拗にやる。

街に繰り出し、強そうな相手にわざと絡んでは喧嘩。

相手がチンピラだろうとヤクザだろうと構わずぶん殴ります。勿論ボコボコにされ気絶し道端でボロ雑巾のやうに倒れます。

が、再び立ち上がって同じ相手を倒すまで執拗に絡んでいきます。

この流れがちょっと爽快というか、ワタシは見ててゾクゾクしたんです。柳楽優弥の佇まいやリアルなファイトシーンに。

倒れても立ち上がって相手を倒す、この流れに爽快な気分を抱いたんです。

ところが突如この流れを物語が急に引くんです。

「そんなんじゃないぞ」

って意地悪なくらいに手を引くんです。

それが菅田将暉演じる裕也が合流し、彼が街行く女性を殴り襲って歩きだすのです。

そう、観ている側がドン引きするくらいリアルに最低な行為として暴力が作動するんです。

先ほど述べた「嫌な感覚」ってのはこれです。

さっきまでちょっと爽快な気分すら味わっていた暴力が急に引くくらい最低な暴力として姿を現し、この暴力に喜んだ者としてワタシは急に自分の姿を見てしまうのです。

そして物語は一切の爽快さも疾走感もなく、ただただ暗くジメジメとした血生臭い逃避行をするのです。

小松菜奈、菅田将暉の良い感じのクズっぷりがより一層物語の暗さを際立たせてます。

唯一の救いは弟の存在か…??

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柳楽優弥、怪演。

さて今作のこの嫌な感覚、じめじめの生臭さ、絶望感…これらをちゃんと映像作品として成立させた要因はまさに柳楽優弥。

この作品はもう彼のおかげで成立してると言っても良いと思います。

それくらいインパクトあります。

カリスマ性すら滲み出ているこの姿は圧巻。

彼の姿を見るだけでも十分に観る価値あります。

でぃすけのつぶやき

無口で何を考えてるかわからない、超然としたその姿にワタシはダークヒーローめいたものを見出してしまいましたが、本来ならば共感すべき、もしくは同じ目線に立つべきは菅田将暉演じる裕也や小松菜奈演じる那奈で、要はワタシたち(=一般弱者)のほうであるべきなのに、気がつけばワタシは自分たちが立つ側を嫌悪していました。

暴力に動機やドラマを探し求めるのがそもそもおかしくて、神さまが気まぐれでおこす災いのようなものなのかもしれません。

ただどうしてもそこに意味とか物語を与えてしまいたくなるのは、やはり人間だからなのでしょうか?

 純粋な暴力、衝動がどんどん狂気じみていき、最後は立派な犯罪となりながら突き進んでいくロードムービー。正直物語も何もあったもんじゃないし、嫌な気分にもなります。

ただ柳楽優弥の怪演は観る価値あります。

理由も動機も物語も必要としない若い衝動を。

 

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