『さよならドビュッシー』の音楽的共感。<ネタバレなし>
3月18日にテレビドラマとして放送されることが決まったことでも話題ですが‥
ピアノ演奏におけるソフトウェアとハードウェア。
今にもピアノの音色が聴こえてきそうな小説『さよならドビュッシー』を読了。
音楽を感じる小説、音色が届く小説とでも言いましょうか、なかなか心に染み入ったので感想を書いてみます。
今作品は既に映画化もされていますしテレビドラマとしても映像化されていますので、勝手に脳内再生はしません。
また今作品の最大の魅力である衝撃のラスト、ネタバレを含む解説は一切ありません。
ただ一つ、ワタシが非常に共感した部分を紹介したいなと思ってオリマス。
『さよならドビュッシー』 中山七里 著
あらすじ
資産家の家系の主人公遥は16歳の少女。仲の良い従姉妹とピアノの練習に励む日々を送っていました。尊敬する祖父や両親に囲まれ、幸せな毎日。しかし、ある晩その生活は一変してしまいます。
火事が起きて同居していた祖父に従姉妹は焼死。本人も全身の皮膚を移植するほどの激しい火傷を負ってしまいます。生死の淵をさまよい、皮膚移植を繰り返し何とか一命を取り留めるのですが、そこへ突如やってきた遺産相続の話。
彼女はピアニストを目指さなければならない状況に追い込まれます。
厳しいリハビリ生活とピアノの練習。満足に身体を動かせない状態から救世主として現れた現役のピアニストである岬と二人三脚の猛特訓の日々が始まる。
しかし、遥の周りでは怪事件が発生しついには殺人事件まで起こってしまうのでした‥
音楽描写の素晴らしさ
この作品の見どころは何と言っても演奏シーンにおける音楽描写でしょう。
有名な曲が多々登場しますが、それらが実際に聴こえてくるかのように繊細に表現されています。
この手の音楽モノだと有名所で『のだめカンタービレ』が記憶に新しいですが、あの作品は漫画以上にドラマが大ヒットしたおかげで受け手が音をイメージする手間が省けた感がありました。
今作も映画化されているようですので、先にそちらを拝見していればまた状況も変わるのでしょうけど。
とにかく小説だけでここまで音を再現するのは素晴らしいと思いました。
今までワタシが文字だけで音楽を想起出来た作品はかなり限られています。
例えば村上龍氏の『音楽の海岸』や『愛と幻想のファシズム』、『五分後の世界』など作品の中でオリジナル音源としてイメージを膨らませてくれる作品はありました。
今作はクラシック、しかも有名な曲が多かったのでその点イメージするのが簡単だったのかもしれません。
でも読んでいてピアノ弾きたくなりました。
ここがポイント。
先ほど少し言いましたが、この作品の中でワタシが非常に共感したというか、感銘を受けた記述があったのでここで引用させていただきます。
たとえばCDはソフトウェアだしCDプレーヤーはハードウェアだよね。実は楽器の演奏も同じで、この場合ソフトウェアは楽譜、ハードウェアは演奏者ということになる。
つまりCDに刻まれた情報をプレーヤーが読み取って電気信号に変換するのと同様、演奏者は楽譜に記された作曲者の指示と意図を読み取って音に変換していくわけだ。
それでは、その変換時に最も大切なことは何だろうか。それは言うまでもなくソフトに込められた情報を忠実に再生することだ。誤りがあってはいけない。歪曲があってもいけない。
素晴らしい考えです。
ワタシは演奏家を目指しているわけではないので、ワタシの場合は自分の脳内がソフトウェアであり、作曲者としてのワタシがハードウェアとでも言いましょうか。
だから自分の頭の中で描いた景色に対して、これを如何に忠実に再現するか?が重要になってくるのですね。
日頃の作業に対する認識の甘さを感じました。
今回は敢えて作品に対しての解説や考察はせず、音楽に対する姿勢のようなものに刺激を受けたのでその勢いのまま紹介してしまいました。
ただ、今作は音楽モノの小説としてだけでなく、ミステリーとしても大変素晴らしい出来なので未読の方はオススメです。
これを機にクラシック音楽にも興味が湧く……と良いですが。
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