平山夢明の小説『メルキオールの惨劇』の感想・レビュー。

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人の不幸をコレクションする男の依頼を受けた「俺」。

自分の子供の首を切断した女の調査に行くのだが…

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平山夢明の小説『メルキオールの惨劇』高尚で上質なユーモアに包まれたグロ物語の感想を書きます。

またしても平山夢明さんの小説になります。
前回『DINER』を読んだ時も、あまりの面白さに一気に感想を書き上げましたが、今作品もぶっ飛び具合でいったら負けず劣らずです。

よくこの作品は『独白する〜』(※1)と比較されがちですが、不気味にエンターテインメントし一気に読ませる物語の強さは今作特有の持ち味のように思えます。(※1『独白するユニバーサル横メルカトル』)

今回はネタバレなしでこの作品の見所をオススメしていきたいと思います。

奇抜でイカレた設定に酔いしれたい。

冒頭でいきなり「これは一体何の話なんだ?」と混乱した人もいると思います。
とにかく設定からしてハチャメチャです。

人の不幸をコレクションする男って。。
主人公の「俺」(12/トゥエルブ)はその男の依頼を受けては各地を飛びまわり、人の不幸を集めてくるのであります。

そして今回の依頼は自分の子供の首を切断した女の調査をすること。そして未だ発見されていない頭部を見つけ持ち帰ること。

はい、もうこの段階で設定はトンデモないことになっており、ただのホラー小説で落ち着く訳ないことはおわかりになるかと思います。

さらにこのイカれた設定には続きがあって、彼女には他に二人の息子がいて、白痴の怪力長男に14歳で白髪の次男。
この家系にはある秘密が呪いのように存在していて…

とあらすじをまとめようにもまとまらないほど奇抜な設定に、まずはたっぷりと堪能して下さい。

厨ニ病感満載の世界観 ネタバレなしで徹底レビュー

読み始めてすぐ思ったのですが、この科白回し、文体、なんか懐かしい感じ……?

そうです、男子なら避けて通れない「厨ニ病」がこじれた時に観た世界がここには再現されているように思えます。暴走しがちな思春期特有のあの感じです。

確かにこの作品は奇抜な設定だし、とてもグロイ描写も多々あります。
自分の甘い妄想満載の中二病とは表現力もなにもかもとてもじゃないですが及びません。

しかしこの絶妙な言い回しとか、ただただ小難しい言葉を多用したがったりとか、哲学的な小道具とかがなんだか懐かしい感じすらするのです。

本当にグロい描写はたくさん出てくるし、設定の一つ「人の不幸」の痕跡を説明するシーンは読んでて嫌な気分になります。

でもそういうの含めても他の平山作品に比べて今作が読みやすいのは一つ、この中二病特有の既視感が成せる業だったのでしょう。

『メルキオールの惨劇』見どころは?ずばり天才VS天才の白熱した心理戦!

物語は後半にかけてこの兄弟が一族にまつわる秘密のために高度な心理戦を繰り広げます。

心理戦?なんて書くと語弊があるかもしれませんが、ワタシ的にはそう映っています。

あまり書いてしまうとネタバレになってしまうのでほどほどにしますが、天才的な頭脳があらゆる語句や知識を武器にせめぎ合う展開にグロテスクさよりもスリリングさが勝ち、一気にページを先へ先へと送ることでしょう。

やっぱり厨ニ病感溢れますが…


メルキオールの惨劇 (ハルキ・ホラー文庫)

伏線なんて気にしなくっていいじゃない。『メルキオールの惨劇』ネタバレ注意。

これもあまり言及するとネタバレに通ずるところなので控えますが、とにかくこの作品にはわけのわからない設定やら小道具やらが出てきます。
それに輪をかけて怪しげな知識に情報で武装した伏線がちょくちょく登場します。

これには賛否いろいろありますが、ワタシはそんなの気にしないで読んで欲しいと思います。

とにかく読者の好き嫌いを極端に判別する平山作品です。

一度読んでダメな人はもう二度とこの本を開くことはないでしょうし、逆に好きだと思った人はもう虜になって一字一句注意しながらもう一度読むに違いありませんから。

だから伏線なんて最初は気にせずこの作品が持つ不気味でスピーディーな展開に身を任せて下さい。未読の方は是非一度。

ワタシは未だに中二病の予熱みたいなのものを患っていますので、どっぷり漬かってしまうのも無理のない話です。

 

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