殺人鬼フジコの衝動も真実も、とにかく厭な感じです。<ネタバレなし>

2016-07-12

『殺人鬼フジコの衝動』から続けて『インタビュー・イン・セル』を読破しました。

はっきり言って嫌な気持ちしか残らない稀有な作品でした。
 
でもこの厭な気持ち、嫌いじゃないんですよね。

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殺人鬼フジコシリーズ読破記念レビュー〈ネタバレ注意〉

先日この殺人鬼フジコがドラマ化されるというニュースが飛び込んできました。まだまだ目が離せませんね。

「フジコ」は11月13日(金)よりHulu/J:COMにて全6話一挙独占配信されるようです。 
 
女性作家でダウナーな作風と言えば、湊かなえ氏が有名ですが、今作品の作者である真梨幸子氏も負けてはおりません。それはこのフジコシリーズを読んで貰えれば分かると思います。
 

あらすじ

 
一家惨殺事件の唯一の生き残りであった10歳のフジコは叔母に引き取られ新しい人生を歩もうとしていました。しかしその新しい人生には常に忌まわしい一家惨殺事件の過去がつきまといます。
 
女子特有の虐めやタカリ、ヒエラルキーがフジコの人生を次第に狂わせていきます。
そしてフジコは平凡な幸せを追っているはずがどんどん凄惨な事件に巻き込まれ(?)てしまい、ついには稀代の殺人鬼として突き進むことに。何がフジコをそこまで駆り立てたのか…?
 
そして物語はフジコを引き取った叔母・茂子とその息子健太に焦点を合わせ、更に「血」の衝動が加速していくことになります。
 

女性特有の厭な世界

 
先ず最初に言っておきたいことが、この作品は読み終えた瞬間の衝撃が何より味わい深いものがあります。
なのでワタシは出来る限りネタバレしないように注意して感想を書いていきたいと思います。
 
しかし内容が内容だし、しかもシリーズ二作品を同時に語るとなるとある程度ネタバレ感が滲み出てしまう可能性もあります。ですので未読の方はご注意下さい。
 
さて、読み終えてのこの厭な気持ち。
凄いモノがあります。ここまで凹ませてくれるこの作品は一体何なんだろうと…
 
普段から残酷な描写には慣れてますし、大ドンデン返しの結末ビックリ作品にもある程度耐性はあってのですが、この作品には何か身体の芯から冷え込むような感覚があります。
 
作品冒頭からもう厭な感じに満ちていて、10歳の少女のあまりに酷な現実が描かれています。
これが本当に酷い日常で、両親は派手にお金を使うわりには子供の給食費を払わない、で子供は学校で虐められる。。どんどん成長していく身体とまだまだ幼いが故の残酷な嫌がらせ。
 
…もう出だしから目を背けたくなります。
 

決してリアルでない。

 
フジコは必然的とも自発的とも取れる形でその手を血に染めていきます。
確かに同情出来る余地を読み手に残してはいますが、それを凌駕するほどアッサリと振り切ってしまいます。
 
目的の為には手段を選ばないというか、邪魔なものには容赦しないというか…
とにかく自分のことしか考えていないフジコは自らの手で人生を困難にしていきます。
 
シリーズ一作目『殺人鬼フジコの衝動』の方はまさに転落人生を描ききっており、残虐版『嫌われ松子』といった具合で読み手を決して離してくれません。
 
フジコが犯す衝動的な殺人は唐突で決して読者の共感とは程遠い領域にあります。勿論殺人そのものが共感を得ることはないのですが、あまりに突発的で、それでいてあまりに自己中な行動にそれまで多少なりとも感情移入していたフジコに対する想いが一気に行き場を失ってしまいます。
 
そこからこの作品は浮遊感のようなものを携えながら残酷な描写を淡々と描いていきます。
あたかも現実感を敢えて喪失させることで余計リアルに感じてしまうと言いますか。
 
決してリアルではないのに、妙に生々しい
そんな厭な感じが終始つきまといます。
 
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『インタビュー・イン・セル』

 
そしてシリーズ二作目となる今作品では物語の時系列が変わり、フジコを引き取った叔母・茂子とその息子・健太を軸に再び翻弄されてしまう人々の姿を描いています。
 
ある団地の一室で集団監禁殺人事件が発覚するも、証拠不十分で無罪を勝ち取った健太。
世間の関心を集める最中、母である茂子が各メディアにインタビューに応じるとの通達を出し、スクープ合戦の取材陣たちは我先にとインタビューに向かいます。
 
しかし茂子の巧妙な話術、行方をくらます健太にこの事件とフジコとの関係に気が付く編集者が次第に核心に近づいた時、再び「血」が流れることに‥‥
 
 
二作目は一転して登場人物たちも入れ替わります。
また前作に引き続き実際に起きた殺人事件をモチーフにしながらフジコにまつわる事件の真相や、そもそもこの物語の中心を流れている「血」を体感することが出来ます。
 
こちらも読み終わった瞬間に最大の衝撃があるのでネタバレは避けておこうと思いますが、このシリーズは間違いなく読み終わった後にとても重たい気分を味わいます。
 
それはミステリーとしての面白さもさることながら、非常に哀しい人間の暗い部分に無理やり光を当たられたような、そんな厭な気持ちがあまりに強烈だからでしょう。
 
厭な気分です。
 
でも嫌いじゃないんだよなー
 
そんな複雑な物語です。ワタシにはやっぱりルパンが追いかける方のフジコが丁度良いのですが。
怖いもの見たさで宜しかったらどうぞ。
 

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