アウトサイダーたちの日常風景。『消し屋A』を読んで。

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先週に引き続きヒキタクニオ作品を連読です。

この消し屋はあの消し屋です

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裏社会の日常。『消し屋A』を読んで〈ネタバレなし〉

で、どの消し屋よ?
と言いますと、先週読んだ『凶気の桜』にてネオトージョーの絆を見事に千切ったあの消し屋の三郎です。
今作ではこの怪しさ満載の消し屋が主役になります。
右傾化だってファッションに。『凶気の桜』を再読しました。

右傾化だってファッションに。『凶気の桜』を再読しました。

あらすじ

例のごとく簡単に、本当に簡単にあらすじを説明すると、あの渋谷での一件を終え三郎とオカマの同居人・蘭子は福岡に潜伏していました。
潜伏と言っても三郎はすでに幸三という名前になり戸籍も用意し、博多で立派(?)な一般市民として生活をしています。
しかし博多に入ってから消し屋の仕事はぱったりとなく、悶々と悪い流れが吹いてくるように感じた幸三は、かつてお世話になった組の事務所を訪れることに。
時代のせいなのか、そこでも仕事はなく却って平和ボケしてしまった裏稼業人たちを見て呆れることに。
そんな中、次第に苛立ちがつのる消し屋・幸三にちょっと不思議な依頼が入り込んでくるのですが…

読み応えポイント

前作『凶気の桜』においても、異常な存在感を発揮していた「消し屋」。今回はその消し屋が主役ということで読み始める前から期待で胸が膨らみます。
しかし、予想とは裏腹に物語はずいぶんとまったり進んでいきます。
焼き鳥屋で飯を食べたり、自宅で料理を作ったり、オカマバーで飲んだりと
なんというか、日常が描かれています。
それは消し屋ですからワタシたちのような日常とは少しばかり違いますが、そこがまたリアリティーがあって一気に引き込まれてしまいます。
後ろ向きでの階段昇り降りトレーニング‥
耳這刀(じばいとう)なる小道具‥
高級スーツをわざとボロくする方法‥
オカマだけど美貌の愛人との生活‥
これが消し屋なるものの日常。
想像もつかないような設定の消し屋というキャラクターのリアルな日常。
きっと一気に物語を動かさずに彼の日常を描くことで後のストーリー展開が一定のリアリティを保ちながら進んでいくことを可能にしているのでしょう。

今回も設定で参りました。

今回、消し屋としての依頼はいつものように存在も、痕跡も事件性をも消してしまうようなことではありませんでした。
ある人気野球選手を一時的に消す、というトリッキーな依頼。
非の打ち所のない名捕手をどうやって一時的に消すのか?
そこから物語は名捕手の出生の秘密、そして野球賭博というお決まりの筋者の世界を舞台へと繋がりクライマックスまで加速していきます。
やはりヒキタクニオ作品は登場人物たちがイキイキとしてます。
物語のためだけに存在するような人物がいないことで、この世界に没頭させてくれますね。
消し屋にヤクザ、オカマたち
癖のあるキャラクターたちが過ごす日常風景
案外、ドラマよりも面白いかもしれません。

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