真梨幸子『深く深く、砂に埋めて』の静かな衝撃【ネタバレ注意】

『深く深く、砂に埋めて』/disk本/映画/感想

『深く深く、砂に埋めて』

ワタシの大好きな真梨幸子劇場。

こうして再び手に取ってしまった今作では果たしてどんな愛憎ドロドロが渦巻いているんでしょうか?

大好きな真梨幸子劇場。過去に色々と感想を書いています。

過去記事

真梨幸子作品のレビューまとめはこちらから。

殺人鬼フジコの衝動も真実も、とにかく厭な感じです。disk-book-fujiko

 

ともだちよりは幸せになりたい『女ともだち』を読んで。『女ともだち』を読んで/disk

 

衝撃のデビュー作 『孤虫症』を読んで。『孤虫症』を読んで/disk

 

『みんな邪魔』で味わう最高の不快感『みんな邪魔』を読んで/disk

さてさて

今回はどんな嫌な感じになるんでしょうかね~

『深く深く、砂に埋めて』/disk

美しさは時に凶器『深く深く、砂に埋めて』を読んで。【ネタバレ注意】

 

真梨幸子作品はいつだってワタシを暗く、重い気分にさせてくれます。でもこの嫌な感じがたまらなく良いんですよね。もうすっかり中毒患者のように次から次へと読み漁りました。

今回はワタシをどんな絶望に追い込んでくれるんですかね。。

あらすじ

かつて一世を風靡した美貌の女優・野崎有利子。彼女に魅せられたエリートサラリーマンが、殺人と詐欺の容疑で逮捕された。やがて明らかになる男の転落と女の性。奔放に生きる有利子は悪女か、それとも聖女なのか?悪女文学の傑作『マノン・レスコー』を下敷きに、女のあくなき愛と欲望を描く長編ロマンス。 Google Books

男と女のサスペンス、この作品の見どころ

この作品は超絶美女の有利子に翻弄される男たちの物語です。いや、男だけにとどまらずこの美女に携わる人間全ての狂っていく人生模様が描かれています。

エリートサラリーマンの斉藤、有利子を弁護する新人弁護士の篠原は彼女の美しさに魅了されどんどん自分の人生を狂わせていくことになります。

まず最初に思いだしたのが桐野夏生作『グロテスク』に登場するユリコ。彼女も持って生まれた美しさがやがて自分を焼き尽くしてしまう運命を背負っていましたが今作の有利子はさらに悲惨。

何せ自分自信で持て余す程の美貌により、周りの男が勝手に彼女に溺れていく。

そして美しさに溺れた男たちは彼女を芸能界から娼婦へと引きずり落としてしまいました

さらなる不幸は有利子がそのことに対してあまり重要視しなかったことでしょうか。

美しさの代償

『グロテスク』のユリコもそうですが美しいものには何かと色々な厄介ごとが寄ってきます。

決して本人からアプローチしたワケじゃないのにどんどん向こうからやってくるのです。

今作でもその美しさが引き寄せる厄介ごとが彼女を悪女としての一面を際立たせてしまいます。

彼女に罪はないとは言えませんが、せめてもう少し平凡な容姿だったらもっと有利子は幸せになっていただろうし、彼女によって苦しんだ人たちも皆幸せになっていただろうと思います。

美人も辛いんですね。

まとめ

真梨幸子劇場、今作では期待していたほどの嫌な感じはありませんでした。

もっとジメジメしてどんよりしている世界が広がっているかと思いましたが今回は控えめ。

有利子に翻弄された男たちが辿る運命を静かに味わっていく作品。

勘の良い人ならすぐ分かるかと思いますが、この作品は手記のような手紙のような書き方で進んでいきます。

それが意味するところが判明した時に、静かな衝撃があります。

また今作には『女ともだち』に出てきたライターさんが登場します。

これまた真梨幸子らしい登場の仕方ですので是非楽しんでください。

ドロドロな嫌ミスを期待するとちょっと物足りないかもしれませんが、最後まで勢い良く読ませる面白さは健在。

真梨幸子劇場をご堪能ください。

 


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