真梨幸子の衝撃のデビュー作『孤虫症』で鳥肌。
あーーまたやられた…
真梨幸子劇場
もういい加減懲りても良いのに止められないこの魅力は何?
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安定の真梨幸子 胸糞注意『孤虫症』《ネタバレ注意》
またやられた…
それが読み終えたワタシの第一声です。
『殺人鬼フジコシリーズ』でなんとも言えない胸糞の悪さを植え付けられ、止めとけば良いのに『女ともだち』でさらに凹まされたワタシ。
しかしこの真梨幸子の中毒性は一体…?
調べてみたらなんと今作がデビュー作。
なんて凄いデビューなんだ…
『孤虫症』
あらすじ
「週に三度、他の男とセックスすることを習慣にして」いる主婦・麻美。彼女の不倫相手が、次々と身体全体に瘤のようなものを作って原因不明の死を遂げる。彼女自身の肉体にも異変が起こる。女同士の憎悪や嫉妬、母娘で繰り返される愛憎劇。一見幸せな主婦の誰にも言えない秘密とは…。
出版社:講談社(講談社文庫)
不快過ぎる描写が素晴らしい幕開け
とにかく第1章を読んでください。
ここに真梨幸子という恐るべき才能を感じることが出来るはずです。
神経質な主婦の視点から物語は幕を開けます。
この主婦・麻美の歪んだ精神がとても生々しく描かれています。
いきなり濃いキャラ完成させるこの描写力。
これがデビュー作だというのだからもうお見事としか言えませんね。
物語は麻美の生活が徐々に狂っていく様をもう止めてくれと思うくらいに《不快感》を伴って進んでいきます。
エロシーンよりもこの不快感がずっと印象的ですので、色んな意味で要注意です。
腹部に痒みを覚え、寄生虫症についての情報が次第に入ってきて関係した男が気味の悪い死に方をして…
第1章の後半はもうホント辛くなるくらいの気味の悪さ。
なのに読まずにはいられない物語の力強さに引っ張られあれよあれよと第2章へ。
定番(?)の舞台・タワーマンションと怪しい住人たち
出来の良い娘の突然の事故死
そして麻美は右手だけを家に残して失踪…
物語は不快感全開のまま第2章へと続きます。
ホラー?ミステリー?気味悪いだけじゃない孤虫症の魅力
そして第2章から主人公は麻美の腹違いの妹・奈未へと変わります。
第1章ではただ美しい妹として登場していた奈末。
それがこの章では生々しく描かれます。
それなりに悩みがあったり、姉の旦那に想いを馳せてたり、、、内側にとんでもない悪意を秘めてたり。
ワタシはこの作品を読んで、まず第1章であまりに生々しくも不快感漂う文章の描写力に引き込まれ、そしてこの第2章で先の読めない展開力にますます楽しみました。
奈末というキャラもまた良いんですよね。
ミステリーでは定番ですが「信用出来ない語り手」として登場し、そしてどんどん壊れていきます。
第1章でも登場はしていたタワーマンションの住人たちの動きが徐々に怪しさを増していきます。
この胡散臭さ。
女性同士のイヤーな感じ。
真梨幸子節炸裂です。
ドロドロな関係性が登場人物たちの身動きを奪っていきます。
次々に出てくる死体
新たに投下された麻美が書いたとされる小説
錯綜する哀しい過去
で・非常に勿体無い幕切れ《ネタバレ注意》
最終章を語る上でどうしても結末に触れてしまう恐れがあるのでこの先未読の方は注意してください。
第1章で生々しくも圧倒的な筆力でワタシを釘付けにし、第2章で物語を暴走気味に加速させ途中下車するタイミングを奪うには完璧な展開…
で
で、ですよ
このラストへ向かう第3章が非常に物足りないと言いますか…でそのまま解決シーンへとなだれ込みます。
これが、、勿体無い…
あの迫力のある第1章、目の離せない第2章の出来の良さから比べるとホント勿体無いと思ってしまいました。
まず色々と散りばめた伏線回収がちょっと強引…
納得は出来ますが、なんかもっと今までの筆力があれば出来ただろうと思ってしまいました。
最後の解決シーンに至ってはもうただ淡々と説明するのみという、ミステリーとしてもサスペンスとしてもちょっと強引な幕切れ。
本作がデビュー作であることを思えば、充分過ぎるほどの完成度ではあるのですが、ホントこのラストだけは勿体無いなーと強く思ってしまうのです。
あとがき
しかし恐ろしい作家です。
目を背けたくなる女性同士の人間関係を描かせたら右に出る者はいないでしょうね。
真梨幸子作品もこれで4本目の読了となりましたが、物語の展開云々よりも注目すべきはドロドロの人間関係でしょうか。
特に女性の世界というか
女性同士の友情の裏に潜む嫉妬とか悪意とか
そういうのがほんと読んでて辛くなるほど‥
毎回作品を読み終えるたびに男に生まれて良かった、なんて場違いな感想を抱きましたが、あながち場違いでもないのかもしれません。
怖いもの見たさ
是非そんな気持ちで手にとってみて下さい。
色々とトラウマになるかもしれませんが‥
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