樋口毅宏『テロルのすべて』の歪んだモチベーション

『テロルのすべて』/disk本/映画/感想

「僕の夢は、アメリカに原爆を落とすことです」

またまたまたまた凄い小説を凄い勢いで一気に読み終えました。

数々のサブカルと歴史をサンプリングしながらアメリカに対する憎悪だけをただひたすら増幅させていくこの独奏を聴いて何を思えば良いのだろう?

 

『テロルのすべて』/disk

『テロルのすべて』を読んで。

かつてエミネムは俺のモチベーションは「怒り」だ

と語りましたが、本作はまさにテロがモチベーション

不謹慎だと思う人もいるかもしれませんが、主人公の純粋に「テロ」をモチベーションとしている姿を見て、ワタシは感動しました。

あらすじ

一九八六年に生を受けた僕、宇津木の鬱屈の正体、それはアメリカという国家だ。都合のいいようにルールを決め、世界の覇者気取りで澄ましているあの国を、心の底から軽蔑している。嫌いじゃない、大ッ嫌いだ。では、僕の取るべき行動は何か。強者の脳天に斧を振り下ろすこと。そう。 …Google Books引用

見どころポイント

豊富すぎるネタとサブカル知識

とにかく雑学というか、情報量が凄い。

しかもその情報がマニアックかつ過剰過ぎ。一体何人の人がリブァース・クモオに似ているという説明を理解するだろうか?

※泣き虫ロックアイコンとして、全てのメランコリーを背負ったまま突如その荷物を放り投げた人気バンドWEEZERのボーカル

この点からも分かるように、引用とサンプリングの洪水に元ネタが分かる人にとってはニヤニヤが止まらない仕上がりとなっています。

そしてこの作品の最大の魅力は何と言っても

アメリカに対する屈託のない意見 

アメリカに対する極端な憎悪を放つ

これが本当に読んでいて気持ち良いくらいに激しく憎しみを発散してます。

アメリカという国が日本に対して行ってきたことを、ここまで憎しみだけを抽出して説明してくれる作品はなかなかありません。

実際アメリカという国のやり方についてはワタシも疑問に思うことが多々ありました。かの大戦ではどう考えてもそれはやり過ぎでしょう?っていう。

それはそのまま世界各地で未だにくすぶり続けている問題を見ても納得いくかと思います。

独自の正義をふりかざし、勝手にルール変えてひたすら強者のためのゲーム展開を世界中で繰り広げてきたアメリカ。

この作品の憎悪を発散している時の輝かしさたるは凄いものがあります。

それだけ憎しみ募らせていながら、なんか真面目な主人公に好感を持つ一方、出てくるキャラクターたちがみんな天才級に頭脳明晰な人ばかりなので今回は登場人物たちに感情移入は出来なかったかな…?

 

したら危ないか⁉︎

非常に短い作品ながらとにかく饒舌にアメリカに対する憎悪を語りまくるエネルギーに、一度身を委ねてみるのも良い経験かもしれませんね。

この樋口毅宏氏の作品はワタシ個人的にはすごい好きで、独特のサンプリング手法や突如圧倒的な暴力を見せつける手腕といいますか、、以前にも書いていますので宜しければどうぞ。

タモリのオザケン話が興味深い『さらば雑司が谷』

フィクションが現実を凌駕する瞬間『民宿雪国』

過去作品に加え、これは本棚にキープすること決定です。

 


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