青山七恵の『魔法使いクラブ』を読んで。忘れていた残酷な通過儀礼を思い出す。

大人になるってこんなに切ないことなんだ。『魔法使いクラブ』を読んで。

青春は儚く、残酷で

純粋で

もう二度とやりたくない

これは多感な年頃を孤独に過ごしたワタシの独り言。

ほんともう一回学生時代からやり直したい、もう一度子供の頃からやり直したいなんてことを割と大人でも平気な顔して言う人いますが

ワタシは絶対に嫌です。

今が一番幸せですから。

そんなワタシの心を静かに、でも的確に深くザクザクと切り込んできた作品『魔法使いクラブ』。

良くある青春小説かと思って油断してたら大ダメージ。

いやー大人になるってこんなにも切ないことだったんですね

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小説『魔法使いクラブ』を読んで忘れていた残酷な通過儀礼と切なさと。

いやね、これたまたま妻さんが借りてきた本の中からなんとなく手にとって読み出したワケです。特に探してきたとか、事前に知ってたわけではなくて、ほんとにたまたま。

もっと言えば最近あまり読書をしてなかったからちょっと気楽に読める奴が良いかな?くらいに思ってて、それでタイトルもなんか可愛らしいからと完全に舐めてかかってしまいました。

その結果、カウンターパンチをもらってしまったようです。。

そうなんです、子どもの頃ってそんなに平和じゃないし、そんなに安定してないし、そんなに幸せに満ちていなかったんだってことをふいに思い出させられてしまいました。

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あらすじ

朝、黄色い車を三台見たから、今日はいいことがるかもしれない」魔女になりたい10歳の結仁は、友人の葵と史人と毎日魔法の練習をしている。3人でいると一番元気なのに、なぜかクラスでは 上手にしゃべることができない。ある日、七夕に書いた願い事がきっかけでさらに孤立を深める結仁だが……。繊細で透徹した視点で描く、揺れ動く少女の心と自立の物語。

青山七恵

1983年埼玉県生まれ。2005年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。07年に「ひとり日和」で芥川賞受賞。09年「かけら」で川端賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

この青山さんの作品は初めて読みました。

が、このちょっと嫌な感じ、嫌いじゃないです

感じたことをまとめていきましょう。

『魔法使いクラブ』

10歳、14歳、18歳

魔法が使えるようになる

そう信じて角来結仁(かくらい・ゆに)は一緒に魔法の練習に励みます。幼馴染の「葵」と「史人」と。

それなりに幸せそうに見える家族と、幼馴染たちとの楽しい日常が描かれるこの第一章。

そうだった、10歳くらいの時ってなんというか「自分は特別」という得体の知れない全能感みたいなものが凄かったなって思い出されます。

これはもう黒歴史とかそういうんじゃなくて、子ども特有の無邪気さ、純粋さが入り交じったものだと思います。

そして友達との妙な距離感。

この自分と友達との境界が曖昧な感じ。誰しも経験あるんじゃないでしょうか。

秘密というか、魔法使いごっこをするこの3人の共有感。そしてクラスメイトとの距離感。

なんかこんなことあったなーって。

近所の友達とは大はしゃぎできるのにクラスではうまく笑えなかったりとかね。このあたりの描写がていねいで読んでいて妙にリアリティを味わうことになります。

そしてこのリアリティが徐々にあの青春の苦い味を克明に再現していくことになります。

ちょっとした学校行事で結仁は突然クラスの中から孤立してしまいます。ほんとに一瞬で。

そう、子どもの頃はこういうことがよくありました。

今でもいじめ問題は深刻ですが、子どもってこういう残酷さが剥き出しになる瞬間が多々あるんですよね。逆を言えば大人になる過程で人間は「残酷さ」をうまく隠していくのかもしれない。

第二章は一瞬でクラスから孤立することになった結仁が中学2年生へと成長しています。

「魔法のことは、さすがに心の底から信じてるわけじゃない。あたしはもう、サンタさんがいないことは知っているし、赤ちゃんがどうやってできるかも知っているし、パパが帰ってこないのはたぶん仕事のせいだけじゃないって、ちゃんと知っているつもりだ」 

幼馴染たちとの交流は続いているものの、3人は少しづつ自分たちの成長を遂げています。

貧弱でいじめられっ子だった史人は背が伸びてイケメンになり、周囲からも一目置かれる存在に。

どちらかと言うと結仁の後をついて歩く奥手だった葵はスポーツ少女として活発に。

そんな中変わらずに自分の殻に閉じこもり、周囲とは距離を置く結仁。過去に体験したあの傷も生々しく彼女を形成しています。

第一章から好きだった伊田くんへの想いは変わらないが、仲良し幼馴染の三人には微妙に変化があります。

これは結仁が[他者を認識]し出したことなのかもしれませんが、10歳の頃はまだ自他未分離な状態が強くて、この幼馴染たちは良くも悪くもかなり密接でした。

しかしこれがそれぞれ自分の好きなことや自分の存在をしっかりと抱くようになってこの密接さのバランスが取れなくなってきたんですね。

そんな状況でついに魔法使いクラブは終焉を迎えるのです。

そして18歳になった結仁が年上の男と高校も行かずに同棲しているという驚きの展開となる第三章。

家庭は壊れ、魔法使いクラブもない結仁は社会から孤立しています。

10歳の時にクラスから孤立させられ、時間をかけて社会から孤立させられてしまったように思えてすごく切なくなりました。

ここで同棲している相手はなんだか不健全な感じが充満してるし、この閉塞感ははっきり言ってかなり暗いです。

でもこの第三章は重たい空気の中だからこそ輝く瞬間があり、それがとても眩しく光ります。

葵はまさかの妊娠、史人はアメリカ留学が決まりかつての魔法使いクラブは物理的にも精神的にも完全にバラバラになってしまいました。

なんとか繋ぎ止めたい史人は過去の魔法の真実を語りだすのです。

でぃすけのつぶやき

壊れてしまった家族との新しい繋がり

他者との新しい繋がり方

この物語は1人の少女の自立の物語だと紹介されていました。

確かに純粋でちょっと他人との距離感掴むのが下手な少女が8年をかけてどんどんと孤立していく様が描かれており、1人で考えて行動しその結果が今だということが理解出来るほどには成長しています。

しかしこれは自立ではなく孤立

…だと思うのはワタシだけでしょうか。

多感な子ども時代をうまく乗りこなせなかった結果が、せっかく密接に繋がっていた幼馴染たちとの輪をも引きちぎり、自分が所属すべき社会から孤立してしまったこの物語です。

あんだけ純粋だった結仁の精神は大人になるための通過儀礼によって。

とても印象的だったのが全3章それぞれに結仁の生き方に影響を与えようとする男性が登場します。

結局誰とも最後まで分かり合えることはなかったけれど、人生を修正するチャンス、可能性がちゃんと与えられていることが心に残ります。そして、うまくそれをつかめないこともあるのだと。

成長すること、大人になるってことは

とても残酷で、儚いんだな。

 

魔法使いクラブ (幻冬舎文庫) [ 青山七恵 ]

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