映画化するならこのキャスト『生存者ゼロ』の感想<ネタバレ>

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エボラ出血熱に関する話題を最近ニュースで見かけなくなりましたが、世界規模でこれはいよいよヤバいのではと思った人も多いのではないでしょうか。
 
幸運にも今の所、国内での感染発症は認められておりませんが、世界規模でまだまだ闘いは続いており、いつ日本に上陸しても不思議ではない状況かと思われます。

実際先日収束に向かっているかと思われた矢先に非常事態宣言が再び発令され、対岸の火事はまだ燃え続けていることをワタシたちに知らせています。
 
 

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『生存者ゼロ』を読んで

 
実際に国内で感染者が発症してしまった場合、日本はどう立ち向かうのでしょうか。そしてワタシたち個人はどう受け止めるべきなのでしょうか。
 
長々と前説振りましたが、久しぶりになかなかスリリングな小説と出会いました。
そして何と言いますか脳内で映像化するのがこんなにも楽しかった作品に久しぶりに出会いました。(色々な意味で)
 
読了後の興奮覚めないうちに感想を書いてみたいと思います。
(※今回は思いっきりネタバレします。あと勝手にイメージも挿入してしまうので未読の方はご注意下さい。)
 

あらすじ

 
北海道根室半島沖の石油採掘プラットフォームTR102が突如連絡が途絶えてしまう。これをテロ攻撃による可能性が高いとの判断から海上自衛隊の護衛艦が急行することに。偵察部隊を率いる長として急遽任命された陸上自衛官三等陸佐・廻田がそこで見たのは職員全員の惨たらしい死体だった。
状況から見てウィルスによる集団感染が原因と考えた政府は、かつて新進気鋭の感染症学者として名を馳せた富樫に協力を要請。さらなる被害拡大を防ぐべく調査を開始するのだが‥
 

イメージし易い活劇。

この作品はパンデミックとおぼしき集団死事件を追う自衛隊員と、アフリカで家族を失った感染症学者が謎のウィルスの正体を暴こうとするサスペンスだと思ってました。てっきり。

実際ウィルス(細菌)に関する専門用語はバンバン飛び交い、無能な政党による政治的混乱が事態をどんどん悪化させていくスリリングな展開に冒頭から一気に物語に引き込まれます。

物語は途中から意外(?)な方向に加速していくので驚くかもしれませんが、それも含めてイメージし易い作品です。

例えば登場人物のキャスティング。ワタシは勝手に映画化するならこの人だろうと無許可でキャスティングし脳内で再生してました。

勝手にキャスティング。

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以下が各登場人物たちの配役です。主要キャラクターだけですが、もし映像化するならこの方々に演じて頂けたら良いなと思っています。

陸上自衛官三等陸佐 廻田 ‥‥西島秀俊さん

陸上自衛官三等陸曹 館山 ‥‥綾野剛さん

防衛医大医師    伊波 ‥‥加瀬亮さん

元感染症学者    富樫 ‥‥長谷川博己さん

首相       大河原 ‥‥立川談春さん

昆虫学者      弓削 ‥‥相武紗季さん

 

 パンデミックの恐怖が迫る前半。

この作品は大きく分けて前半と後半でかなりカラーが変化します。前半はウィルスの正体を突き止めるべく緊張感溢れる展開が良かったです。

未知のウィルスは炭疽菌に似ているということ以外は何も掴めずに時間だけが過ぎていき、政府の無能ぶりだけが目立つ中9ヶ月後に北海道標津郡を再びウィルスが襲います。富樫はアフリカで妻子を感染症によって失ったトラウマを抱えています。まさに地獄を味わった天才学者は精神の均衡を保とうと覚醒剤に手を出してしまいます。

そして妻が残した言葉「パウロの黙示録」に次第に影響されていきます。

結局事態を軽く見た政府と感染研究所のライバルの策略により富樫を覚醒剤容疑で監禁してしまいます。

一方廻田はいつまで経っても危機感の薄い政府に対して独自に調査をするように指令を下されます。そして極秘ミッションの中で廻田はある法則に気がつきます。

それが発症事件がすべて「新月」に起きているということ

そしてここから物語にタイムリミットが設定され、より緊迫した展開になっていくのですが…ここでまさかの正体が判明します。なんと………

シロアリ。

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モンスターパニックな後半戦。

覚醒剤による禁断症状で誇大妄想に取り憑かれた富樫を連れて最初の現場である石油採掘プラットフォームTR102に戻った廻田たち。

すでに廃人間近の富樫をさらに強力な薬セレネスを投与し、抜群の冴えを発揮させついに二人は事件の真相を突き止めます。そして昆虫学者・弓削の協力のもとついにウィルスの正体を暴くことに成功します。

次の新月までに対策を講じたい廻田たちと責任を取りたがらない政府との対立でいたずらに時間が過ぎていく中、北海道から非難しようと大量の市民が旅船によって国外に退去するという事件が発生します。しかしこの船は中国軍によって沈められてしまいます。

無策の日本政府はどんどん世界から孤立。

新月までのタイムリミットはどんどん迫る。

展開は非常にスピーディーで緊張感はますます高まります。そしてついに暴かれた真相であるシロアリ。

物語はここからシロアリVS人類というモンスターパニックへと変貌します。

Xデーである新月を迎え自衛隊は総力をあげてシロアリ駆除をすることになります。北海道はシロアリ駆除によって炎に包まれるのです。

……そうです。非常に緊迫したサスペンスから一転、突如B級映画な展開に。

この最後の闘いの見どころは何と言っても強烈な民主党批判に満ちていることです。

無責任に現場に介入することで事態をどんどん悪化させていく政府。そして現場は死傷者で溢れていきどうにもならなくなった首相は爆弾で一気にリセットさせてしまおうとします。

これあの東日本大震災での原発事故の状況を思い出させます。当時の民主党政権がどれだけ後手後手だったかはもう周知の事実となりましたが、今回、作中強烈な批判となって描かれています。

これ、なかなか痛快でした。

物語はシロアリVS人類はシロアリが放つフェロモンによる撃退方法が発見され、爆弾投下寸前で最悪の事態は回避されます。

一方で誇大妄想が最高潮に達し、もはや神レベルに到達した富樫。最後まで気になる予言めいた科白をまき散らすのですが居合わせた赤ん坊を助けるために神富樫はシロアリの犠牲になってしまいます。

パウロの黙示録は避けられたのです。

七か月後、廻田は富樫のかつてのアフリカ・ガボンの研究施設を訪れます。

そこではいまだに原因不明の感染症が流行しており住民は退避していました。またドイツやアメリカではガボンから輸入されたアフリカミドリサルに関わった研究員が感染し命を落とす事件が起きていました。

廻田は富樫の最後の科白が気になって仕方ありません。

ガボンまで来たのは何のためなのか?それが自分の意志なのか?最後に富樫のノートを発見した時、廻田は新月が来ることに気がつきます。

 

最後の考察。生存者ゼロへのカウントダウン

最初読み終えた時は後半のパニックムービーぶりに目を奪われてしまい最後の意味についてイマイチ良く分かっていませんでした。しかし次第に冷静になると生存者ゼロの意味がなんとなく分かった時に再度興奮がワタシを襲いました。

最後にワタシなりの考察をまとめたいと思います。

神がささやく言葉

注意深く読んでいると度々神の言葉がつぶやかれます。最初は富樫の覚醒剤による禁断症状のものかと思わせますが、小説の冒頭で既に神と出会ったとの記述があるし、その言葉は廻田に対しても語られています。

廻田の部下で自殺した館山も「何かが頭の中で囁きます」と告げていますし、神が単なる妄想でないことが分かります。

おそらくウィルスによって既に侵されていた人にだけ聞こえる囁きなのでしょう。このウィルスがやがて人の行動をもコントロールすることになります。

最後に廻田がガボンにやってきたことの意味もそれでつながります。

富樫が理解していた真相。

ドイツやアメリカの研究施設で発生した新たな感染症事件。

ウィルス保持者である廻田がガボンに新月の日にやってきたこと。

廻田がその後ガボンでサルに襲われるのか、感染症が発症するのかまでは描かれていませんが人類破滅への道が開かれるところで幕は閉じます。

最後に

多少強引な展開ではありましたがスリリングな冒頭から一気に読ませる力を持った作品でした。ワタシは非常に楽しめました。

事件が起こる日程や無責任な政府の対応など、3.11を強く連想させるディティールがあり作者の強烈な皮肉を感じる個所も色濃くありますがそれも含めて楽しめました。

今回は勝手に脳内でキャスティングしたこともあって面白さは倍増しました。この作品に限らず小説を読む時は勝手に配役を当てると楽しめますね。

 

 

 

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