ちょっと物足りない?『その女、アレックス』の衝撃度

その女、アレックスを読んで本/映画/感想

 

ミステリー界の新星にして最高の評価を得た話題作。
ついにワタシの本棚にもやってきました。

 
・本屋大賞翻訳小説部門1位
・週刊文春ミステリーベスト10
・このミステリーがすごい!
・「IN☆POCKET」文庫翻訳ミステリーベスト10
・「ミステリが読みたい!」
・リーヴル・ド・ボッシュ読者大賞
・英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞
 
史上初の快挙である7冠を達成した話題作。
書店でもかなり過激な帯と共に平積みにされていたのは記憶に新しいでしょう。
 
さて、この最高の評価を得た話題作はミステリー界にどんな衝撃を与えたのでしょうか?
 
 

衝撃?!『その女、アレックス』を読んで《ネタバレ注意》

その女、アレックスを読んで

 
ピエール・ルメートルというフランス人作家の書いた本作が史上初の7冠を達成し、「あなたの予想はすべて裏切られる」という過剰なほどの文句と共についにワタシの本棚にまでやってきました。
 
日頃から騙されまくることで快感を覚えるちょっと変態的な読書傾向のあるワタシをどれだけ喜ばせることが出来るのか?非常に期待の持てる作品でしたが…
 

あらすじ

 
美しい女アレックス。彼女は30歳とは思えない美貌を持ちながら独り暮らしを楽しんでいる生活を送っていました。そんなある日、突然見知らぬ男に誘拐されてしまいます。そこからは圧倒的な暴力で征服され、人知れぬ場所に監禁されてしまいます。
焦るのは警察。事件が起こったことだけは判明しているのに、被害者が誰かも掴めないままただ時間だけが過ぎていく‥
指揮を取るのはかつて同じような誘拐事件で身ごもった妻を惨殺された経験を持つ刑事。
過去から逃げるように生きてきた刑事が事件と再び向き合う時に彼の執念に火がつくのですが‥
 
一方酷い姿で監禁されているアレックスは全裸で小さな箱の中に閉じ込められています。衰弱していく彼女を狙うのは腹を空かせたネズミたち。彼女の命に危機が迫る中、警察は後一歩で誘拐犯を捕らえるところで逃してしまい、容疑者は自殺に近い形で死んでしまいます。
容疑者を失った捜査は思わぬ形でアレックスの監禁場所まで辿り着くことができましたが、そこに彼女の姿はありませんでした。
 
果たしてアレックスはどこへ‥?
彼女の正体は‥?そしてこの監禁事件を紐解いていくうちに、明かされていく真実とは‥?
 

批評

 
今回はなんといっても前評判があまりに大きく聞こえ過ぎていました。普段からあまり書店の帯とか評価とかは気にしないタイプなのですが、今回はちょっと意識してしまいました。
否応なく期待してしまっただけに、読み終わった時の「物足りなさ」を感じてしまいました。
 
なので今回は結構辛口です。
 
「あなたの予想はすべて裏切られる」
 
ええ、まさに裏切られました。
物足りなさとして‥
 
 
冒頭の穏やかな生活の描写、そして突然訪れる暴力までの流れは緩急がついていて良かったです。美しい街並みとか、アレックスのライフスタイルとか。丁寧に描かれています。
そして始まる暴力。これがまた圧倒的な暴力で読んでいて痛いくらいです。(とは言えこの手の作品を読み慣れているので平山夢明氏とか友成純一氏とかの肉体破壊という面ではそこまでの痛さではありませんでしたが‥)
 
監禁方法も独特で中世の拷問になぞらえたり、まったくの他人であると思われた犯人との関係が実はありそうだと匂わせたり、この第一部に関しては非常に読み応えがありました。
 

物足りなさ①

警察、捜査陣のキャラクター造形が惜しい…
壮絶な過去を持つ小さな刑事に巨漢の同僚、ファッションセンス抜群のセレブな刑事となかなか個性的な設定が多いように見えますが、これがあまり生きていない。
 
例えばジェフリー・ディーヴァーのリンカーンライムシリーズ。この作品のキャラクターたちはみんな生き生きとしていますし、それぞれの個性が捜査において活かされています。
このアレックスでは「捜査」にあまり重きを置いていないのでどうしても刑事たちのキャラクターは存在感が薄くなってしまいます。
 

物足りなさ②

先ほども少し触れましたがミステリーの醍醐味である謎解き、事件の解決方法が弱いんです。
捜査するシーンはあるし、緊迫したやり取りは登場するものの、結局全て事件が主体となっており、刑事たちの力でたどり着いたものはありませんでした。
 
ちゃんと仕事はしてるのに結果が出ないパターンですね。
次々と起こる事件を全て後手後手の対応に‥
 

物足りなさ③

主役不在による展開。
おそらくこの作品の主人公はアレックスであり、彼女の凶行と悲しい過去が重要な役割を果たしています。
 
前半の導入部分で多いに感情移入できるように仕向けながら、中盤から後半にかけてのスピード感溢れる暴走っぷりにワタシは見事置いてかれまして。
 
では中盤からは刑事たちをメインに進行するかと思われるも彼らの捜査シーンに見せ場はなく、読んでいて
非常にバランスの取りづらい作品でした。
これはあくまで個人の好みの問題なので、そこまで気にすることではないのですが。
 

物足りなさ④

称賛されるほどのドンデン返しでもなく、裏切られた予想もさほどの衝撃は…
ここからネタバレ注意です
 
確かにあのラストには驚きました。
彼女の壮絶な過去が今回の連続殺人の発端でした。
この真相が暴かれた時にワタシはすごい切ない気持ちになりました。
 
しかしこれもまた「起こってしまったこと」。
結局一番ドキドキと引きこまれたのは導入部だけでした。。
 

 

感想

 
ちょっと物足りなさが勝ってしまった作品でした。
でも前半の引きこまれ方はすごいものがありましたし、評価されるだけのインパクトのあるラストもあります。
ただ、個人的にそのインパクトが物足りなかっただけで‥
 
ちょっとグロい描写があったり、アレックスの過去は女性には特に衝撃的なものですので注意が必要です。
 
騒がれていた程のインパクトはなかったけれど、読み応えはありました。
 

 

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