ドラゴン・タトゥーの女シリーズ。映画『蜘蛛の巣を払う女』を観たけれど【ネタバレなし】
かつてワタシをこれでもかと熱狂させた『ドラゴン・タトゥーの女』という映画があります。(もちろんデヴィット・フィンチャー版)
当然のことながらボカシあり・なし論争(勝手にワタシの中だけでわき起こった)に蹴りをつけるためデラックス版を後日購入し、原作も3部作一気に読み漁った経験があります。
残念ながら原作者であるスティーグ・ラーソン氏はもうこの世にはおらず、続編というのはもうないのだと諦めておりました。(かねてからこのシリーズはまだ続くことが言われていました)
しかし、そんなファンの心を知ってか知らずか
残った原稿を元に再構築された続編があり、そしてそれを映画化したという。
ようやく観る決心がついたので鑑賞したのですが、、さてその感想は?
『ドラゴン・タトゥーの女』シリーズの感想はこちらから↓
映画『蜘蛛の巣を払う女』簡素化されたドラゴン・タトゥーの女の世界観。
原作未読ということと、既に前回からキャストも監督も変更という情報があり観るのをためらったまま随分と長い月日が経ってしまいました。
だけどやっぱり気になる、、ということで今回は原作よりも先に映画を。
あらすじ
凍てつく冬が訪れたストックホルムで、天才ハッカーのリスベット(クレア・フォイ)に、人工知能研究の権威バルデル博士から依頼が舞い込む。 その内容は、彼自身が開発した核攻撃プログラムをアメリカ国家安全保障局から取り戻すというもの。彼女の能力からすればたやすい仕事だったが、これは彼女への復讐(ふくしゅう)をもくろむ生き別れた双子のカミラ(シルヴィア・フークス)が仕掛けたわなだった。yahoo映画より引用
さて、実際のところどうだったのか?
結論から言うと、、そこそこ楽しめた。
そう、楽しめた、というのが正直なところ。
ただこのシリーズ最大の魅力であるキリキリと締め付けられるような暴力性と緊張感や、複雑に絡み合ったプロット、ミステリーとしての面白さがどこか希薄。
そもそもドラゴン・タトゥーの女シリーズは楽しめちゃ駄目だとすら思うのです。
デヴィット・フィンチャー版のあの暗く重たい絵の中で、じっくり絡まった糸をほどいていくようなあの緊迫感こそがこの作品の世界観だったはずなんです。
女性に暴力を振るう最低の男にはそれ以上の過剰な暴力で成敗する、という割とわかりやすい軸を過去というフィルターで丹念に隠し、またそれをPCハックで暴いていくというこれまでにないプロセス。
そして突然差し込まれるショッキング過ぎる暴力描写…
楽しめる要素よりもやはりそにあるのは緊迫感だったんです。
しかし本作はどうでしょうか?
映画として普通に楽しめてしまったんです。
エンタメ性の追求は世界観を損なわせてしまうのか?
ワタシがちょっとひねくれているものだから冒頭からこの方向で話が進んできておりますが
決して楽しめるということは悪いことじゃないんです。それこそ映画としては本来あるべき姿かと。
しかしここがシリーズ物の辛さで、きっとワタシのようにこの「シリーズ」を捉えている人はいるはず。
その人たちからすると本作のエンタメ性の高さにはちょっと違和感があるのでは…と。
その要因はおそらくこの監督。
日本でもヒットしたホラー映画『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレス氏
本作でもその手腕は発揮されていて、スリリングなアクションシーンはエンターテイメントとして普通に惹き込まれました。わかりやすい悪役との攻防や肉弾戦はこれまでのシリーズにはない面白さだったと言えるでしょう。
そこにガジェットを駆使したハッキング要素が加わることでこのシリーズらしさ、は演出できたと思います。
これをどう取るのか?で評価は分かれるところです。
あとは本当に個人的な嗜好の問題ですが
やっぱりリスベットとミカエルはフィンチャー版のキャスティングが最高だったな。と。
ルーニー・マーラ演ずるリスベットの妖しさとかダニエル・グレイグのミカエルが放つ雰囲気、これがやっぱりしっくり来る。というかワタシ的にはこれしかなくて、本作のリスベットがどうしても入ってこなかったんですよね。
いっそ本作で登場するリスベットの双子の妹もルーニーが演じてくれたらな、と妄想。
また中盤からひたすら分かりやすい攻防が描かれていくけど、リスベット生誕の謎や過去との因縁など深く掘り下げられるネタがあるのにあまり触れないのはもったいない。
このあたりもエンタメ性を追求するが故に描けなかったのかな、、と感じてしまいます。
楽しめるけど物足りない。
そんなちょっと惜しい感想となりました。
最後に、全体の色調はまずまずで今回も前作のあの名オープニングを意識していたり、暗く冷たいトーンは健在。
リスベットの黒と妹カミラの赤とのコントラストは視覚的に狙いすぎてはいるけど美しかった。
このあたりは製作総指揮を努めたデヴィッド・フィンチャー氏の功績でしょう。