映画化不可能⁈ケッチャムの衝撃作『オフシーズン』(ネタバレ注意)
最恐のスプラッターにして最高の興奮。
この問題作を最後まで読み続けることができるのか⁈
もはや映画化不可能か⁈『オフシーズン』を読んで。
ジャック・ケッチャムという作家をご存知だろうか?
もし知らないなら、それはそれで幸せな人生かもしれません。
もし既にご存知の方ならば、そのニュアンスが伝わるかと思います。そして同時に、知っているからこそ味わえる胸糞悪い快感を何と伝えるべきか悩むこともまた、理解してくれるかと思います。
とにかく、グロ・グロ・グロくて胸糞悪くて、人間の醜い部分をこれでもかと突き付けてくる作家は他にいないでしょう。あまりのグロさにこの作品だけは映画化されていません。
ここ最近ハマっていた真梨幸子さんもこちらには勝てないでしょうね。
…というかケッチャムに勝つということはもはや人間ではなくなっているということかもしれません。
あらすじ
避暑客が去り冷たい秋風が吹き始めた九月のメイン州の避暑地。ニューヨークから六人の男女が休暇をとって当地にやって来る。最初に到着したのは書箱編集者のカーラ。すこし遅れて、彼女の現在のボーイフレンドのジム、彼女の妹のマージーとそのボーイフレンドのダン、そしてカーラのかつてのボーイフレンドのニックとそのガールフレンドのローラが到着した。六人全員が到着した晩に事件は勃発した。当地に住む“食人族”が六人に襲い掛かったのだ。“食人族”対“都会族”の凄惨な死闘が開始する。 Amazonより引用
信じられませんが、実は物語のベースとなった実話が存在します。
この作品には野蛮な食人一族が登場します。この食人一族、実は実在したモデルがおります。(信じられませんが…)
15世紀から16世紀にかけてスコットランドに実在したビーン一家。近親相姦を繰り返し繁栄した彼らは海岸の洞窟に住み旅人を襲っては金品を強奪、やがてその死体を食べるようになったという‥
ではそんなことも頭に入れながら、早速本書を読んでいきましょう。
曖昧なボーダー 暴力に隠された本当の衝撃
グロテスク、スプラッターが苦手な方はこの本を読むことはおろかケッチャム作品に近づかないことが賢明な選択だと思います。
とにかく凄惨な描写がかなり生々しく続きます。
それはもう例えじゃなく想像できないほどの。
主人公カーラが(これ勝手に主人公だと思ったワタシ)情事に耽っている最中にまっさきに犠牲になるわ、逆に最初に殺られちゃうだろうなと思っていた臆病なカーラの妹が最後まで奮闘したり…と裏切りの連続です。
カーラのあの圧倒的なまでの解体シーンには文字どおり言葉にならない衝撃です。
この作品の見どころの1つはこの予想を超える展開の数々です。
著者のインタビュー曰く、
人生とはそういうこと、世界とはこういうものだ。と。
不条理の連続で成り立つこの世界を凝縮したかのような恐怖の一夜がスリリングに描かれます。
本当に野蛮なのは…?
そしてもう1つ、この作品の魅力は読んでいるワタシたちに問いかけるモラルの問題です。
突如野蛮な人喰い族に襲われた都会からきた主人公たち。編集長や俳優やら洗練された都会人たちはこの突然の襲撃にパニックに陥ります。
このパニックはやがて都会人たちの野生を呼び起こし、壮絶な死闘を繰り広げることに
銃を使い、知恵を使い本能剥き出しの野蛮人たちを振り払う境界線が次第に霞んでくるのです。
この曖昧なボーダーが読んでいて非常に不気味
普段ワタシたちは文明社会の中にいてきどって暮らしてますが、一度野生を剥き出しにすれば野蛮人とそう変わらないのだと‥
極め付けは捜索に駆けつける警官たちが人喰い族に対して行った虐殺。一度外れた理性の鍵はもう掛け直すことはできないまま衝撃のラストを迎えます。
衝撃のラスト。修正された経緯
実はこの作品。今読めるこの作品は「無修正版」であることが巻末の著者追筆からわかります。
先ほども引用しましたがケッチャムが語ったテーマ
世界とは、人生とはという軸を見事に昇華させるためにはこのラストが必要だったと熱く語っています。
しかし当時の編集者はここに少しでも希望を与えたがっていたようで…
作り手の情熱、作品に対する姿勢とかこの巻末が個人的にけっこう面白かったです。
そんな経緯も知りながらもう一度読み返したらまた新たな発見があるかもしれません。
…続けて読む元気はないけど。
他にもたくさん本や映画の感想を書いてます。良かったらワタシの本棚も覗いてみてください。
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