『二00二年のスロウ・ボート』リミックス文学という新ジャンル。

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リミックス文学は何を生むのか?『二00二年のスロウ・ボート』

この時代はリミックス文化。

焼き増しされ続け消失したオリジナルを求め、さらにリミックスは続いていく。

映画、音楽、ゲーム、漫画、小説…人が生み出した創作物に対して、それが純粋なオリジナルであると証明することはとても難しいことです。

一体何がオリジナルなのか?なんて最早求められていないのかもしれませんが、例え流れがオリジナルから遠ざかるほうに強くても、やはりワタシは人を惹きつけるのはオリジナリティであると思います。

しかし時に切り刻む、抽出し、並べ換えてリミックスされることによって、より強烈なオリジナルを獲得するというレアなケースもあるのです。

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〈ネタバレ注意〉二00二年のスロウ・ボートが紡ぐポップなビートに酔いしれる

さてリミックス。

ワタシの大好きな作業の一つ。

既に組まれているモノをほどき、自分の好きな部分だけを使って再び組み立てる作業。

ワタシの趣味のスクラップブックも言ってみたらリミックスなのかも、しれない。

さて本作『二00二年のスロウ・ボート』という作品を読みました。

読みながら考えたこと、感じたことを書き殴ってみようと思います。

多少読みにくい部分、乱れる部分があるかもしれませんがあとでリミックスすれば良い⁉︎

今作はページを開いてすぐに

「中国行きのスロウ・ボート RMX」と書かれていることに加え

巻末にある自身の手で綴られた書評、そこにあるようにこの作品は村上春樹の『中国行きのスロウ・ボート』のリミックスという作品です。

通常リミックスという冠が付く作品は音楽作品だろうという先入観を見事にぶち壊してくれました。

村上春樹のフレーズを抜き出し、好きなようにアレンジし再生する。

まるでDJのように壊し、再生し構築されたこの作品を、いつしか心地良く読んでしまいました。

作者古川氏と言えば、圧倒的な筆力で犬を描ききったイメージが強いのですが(『ベルカ、吠えないのか?』)本作でもその文章の面白さは健在。視覚的なイメージがどんどん押し寄せてきます。

独特の語り口でハイスピードに繰り出される言葉の応酬に目が回りそうになりながら、いつしかそれが気持ち良くなってくるから不思議です。

さながらどぎついサンプルミュージックを大音量で聴いてる感じです

実際オウテカぴったりでした。(個人的に)

 

東京から脱出する

物語は主人公の独白で語られる。

幼少から東京という街を憎み、そして脱出できない歴史を。

日本語という限定された言語を駆使し、東京脱出の失敗を語り続ける主人公、脱出の鍵を握る3人の彼女の存在。痛い失恋‥

彼は語る

持てる限りの日本語を駆使して語り続ける

めちゃくちゃな言葉の放流をうまく整理することでコミュニケーションを取れた初恋。

肉体の交わりを通じて距離を測った大学生の恋

そして見事な包丁さばきと天才的なセンスで彼の経営するお店を盛り上げた年の差恋。

彼は語る。

とにかく語る。

あとがき

そもそも素材が村上春樹なのだから面白くないワケがない。

しかしワタシはこの作品を読んでまったく村上春樹を感じませんでした。

リミックスもここまで繊細にかつ大胆に行えば素材はさらに進化するんですね。

これがもう少し原作を意識して(敬意を払うとか何とか言って)いたらこうはならなかったと思います。

やるからには大胆に。これぞリミックス。

非常に短い作品ですが、語られる言葉の洪水はすごい勢いです。何故だか読み終えた後、無性に文章を書きたくなりました。

 


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