『きいろいゾウ』を読んでこんな夫婦になりたいなと思った。
心の奥からじんわりと温まるような
そんな気がしました。
初めての西加奈子作品。
噂には聞いていたのですがなかなか機会がなくて読まずにいたところ
妻が買ってきたので拝借。さてさて初の西加奈子作品の感想はいかに??
スローライフに憧れる、『きいろいゾウ』を読んで。
普段ワタシが愛読しているようなドロドロの血生臭くさはないし、人が死んだり解体されたりしないし、ラストで大ドンデン返しが待ってたりしないし、アウトローも聞いたこともないような変態やらが登場しない。
‥果たして物足りるのか?
あらすじ
あらすじと言っても特に入り組んだ設定もなければ小難しい用語も、複雑な展開もありません。
若い夫婦が田舎暮らしをする、というもの。
シンプルそのもの。
若い夫婦の奥さんは「ツマ」といい、旦那は「ムコ」という笑ってしまうようなネーミングです。ツマさんはちょっと不思議な能力(?)があって毎日騒々しく、それをムコさんが温かい目で一日の出来事を日記に書く、というスタイルで物語は始まります。
しかし、どんな平和な暮らしにも、どんな幸せな夫婦にも、必ず「過去」は存在するのです。
勝手に脳内再生『きいろいゾウ』独断と偏見でキャスティング。
先に断わっておくと、本作はちゃんと映画化されてオリマス。ワタシが今さら映像化するなら?とかキャスティングするなら?って騒いだところでどうにもなりません。
ただのワタシの願望です。
ツマさん……麻生久美子さん。不思議ちゃんを演じさせたら敵なしでしょう。透明感のある不思議ちゃん。まさにツマさん。
ムコさん……浅野忠信さん。ちょっと影があって、ワイルドさが出ていながらも温かい表情も作れます。この人の影の部分が濃すぎるかもしれませんが、ワタシの中のムコさん。
ムコさんの元カノ(緑)……奥貫薫さん。不幸そうな女優と言えばこの方。本作でもきっとハマり役に?
夏目(緑の夫)……浅野和之さん。神経質そうな研究者がピッタリです。
あとは正直ほのぼのとし過ぎてこれだという思い付きがありませんでした…
あと読みながらずっと聴いていたのがKashiwa Daisuke。彼の繊細な楽曲がツマさんの妄想世界と田舎の風景がリンクして最高のBGMとなってました。
読みどころ。
とにかく冒頭からの2人のかけあいが笑えます。ツマさんの妄想癖、ムコさんのおっとりした感じ
こんな夫婦良いなーと強く思います。
そしてこの夫婦の生活。
これもまた憧れます。なんだか大切な人と一緒に、ゆっくりと暮らすっていう当たり前の幸せを忘れていました。
ある日ムコさんのもとに1通の手紙が届き、そこからこの夫婦にはちょっとした試練が訪れます。
他人の過去
仲の良い夫婦。とはいえ元は他人なわけです。
人間誰しも過去があります。その過去があって現在が存在するのです。
どんなにおっとりと、のんびりと、平和に暮らしていようとも過去は確かに存在し、時に過去の影が伸びてきて現在に達してしまうことも、またあるのです。
夫婦は愛し合う他人ということ。
相手を認め、受け入れるところから夫婦という関係はスタートします。
人は相手の過去をも含めて、認め愛することで安心できるのかもしれません。
今回後半は読んでいて辛い場面もありました。
特に前半がキラキラと幸福に満ちていただけに
2人の気持ちがゆっくりとすれ違っていく感じ。
お互いの過去がゆっくりと現実に浸食してきて、不安に押し潰されそうになるツマさんとムコさんたち。
お互いがお互いをどれだけ必要としているのかを再確認するシーンは鳥肌モノです。
ユニークなネーミングセンス。
さて本筋から外れます。
とにかく読んでいて面白いのがこのネーミングセンス。夫婦2人の名前に近所の人たち。
ツマさん、ムコさん、アレチさんにセイカさん。カンユさんにコソク…
それぞれの名前の説明も笑えます。これは是非読んでもらいたいですね。
で、これはツマさんを軸とした世界に属する人たち(動物、モノたち)を表しているんですかね、カタカナ表記。
実際他の登場人物たちはちゃんと漢字で呼ばれています。
そして各章の冒頭に必ず絵本が挿し込まれています。
この絵本が本作タイトルの由来でしょうか。
夫婦っていいな
家族っていいなって、なんだか無性に早く家に帰りたくなりました。
こんな夫婦になれたら良いなって。
普段こういうハートフルな作品を読まないので余計に感動してしまいました。
良いですね、血生臭くないし、人が死んだり解体されたりしないし、ラストで大ドンデン返しが待ってたりしないし、アウトローやら変態やらが登場しないって。
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