『侠飯』感想|ヤクザが教えてくれる “粋な家ごはん”──忙しい40代が週末に作りたい3品
仕事に追われ、家事や雑用に時間を奪われる日々。
自分だけなら「今日はもう簡単に済ませよう」と、スーパーやコンビニで適当に買ってしまう、なんてことはありませんか。
そんな自分に小さな疑問を投げかけてくれるのが福澤徹三の『侠飯(おとこめし)』です。
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なぜか心に響く『侠飯(おとこめし)』その理由を考えてみた。
あらすじ
就職活動中の大学生が暮らす6畳のワンルームに転がり込んできたヤクザは、妙に「食」にウルサイ男だった! 異色グルメ小説。
表向きは「ヤクザ×料理」という一見破天荒な設定ですが、ページをめくるごとに立ち現れるのは、「男の誇りと日常の丁寧さ」です。
この作品では高価な食材や凝った技法はほとんど登場しません。料理に詳しくないワタシでも楽しめます。
ですが柳刃(やなぎば)という組長が作る一皿には、作り手の覚悟と愛情が凝縮されています。
それを読んで思ったのは、料理は忙しい大人にこそ必要な
“整えの時間”だと。
また就職活動に手こずりながらも、今ひとつ身が入らない大学4年生の若水良太が、ヤクザとの奇妙な共同生活を経て一人前の漢になっていくプロセスは料理という要素以外でも十分楽しめます。
とは言え、やはりこの作品の魅力は料理の場面、食事です。
今回は『侠飯』のエッセンスを拾いながら、40代の忙しい週末に取り入れたい「粋な家ごはん」3つ紹介します。
本作の通り、難しくない、でもちょっとだけ丁寧に。
そんな日常の回復レシピです。
「侠飯」が教えてくれる料理の本質
柳刃の料理は特別なものではない。
使う調味料も道具も、どこの家庭にもあるものばかりです。
しかし一つ一つの工程に手を抜かない。火の入れ方、塩の振り方、盛り付けの丁寧さ――その小さな差が味を決定づける。
ここに「手を抜かない、でも無理はしない」という哲学があります。
その姿勢は、40代になって変わる「ものさし」と親和性が高いと思います。
若い頃のように時間も体力も無限ではありません。
だからこそ、限られた時間に“効果的に丁寧”を差し込む。そのための最短ルートが、柳刃の作る料理の中に詰まっていると思いました。
『侠飯』を読んで週末に作りたい“侠な”家ごはん 3選
1)ペペロンチーノ──火を育てるように作る
材料はシンプル:スパゲッティ、にんにく、鷹の爪、オリーブオイル、塩だけ。ポイントは「焦らずに火を育てること」。にんにくは弱火でじっくり香りを出し、オイルに旨味を移す。火加減を慌てて上げず、麺の茹で上がりに合わせて乳化させると、シンプルながら満足度の高い一皿になる。
忙しい日でも、ペペロンチーノなら手早く作れる上に、作り手の“集中”がそのまま味になる。柳刃のペペロンチーノは、料理の速さではなく「丁寧さの濃度」を教えてくれる。
2)余り野菜の味噌汁──食材に礼を尽くす一杯
冷蔵庫の端に残った野菜の切れ端が、味噌汁の出汁に深みを与える。昆布や鰹で基本の出汁を取り、残り野菜を丁寧に下茹でしてから合わせると、驚くほど満足度の高い味になる。具材を無造作に放り込むのではなく、出汁を丁寧に扱うだけで味は一段とよくなる。
家族の多い家庭では大鍋一杯作るのもよいが、少人数なら小鍋一杯で十分。食材を「捨てる」選択ではなく「生かす」選択に変えるだけで、食卓の質はぐっと上がる。
3)卵かけごはん+α──小さな贅沢で気持ちを切り替える
卵かけごはん(TKG)は最も手軽で、ちょっとした工夫で格段に美味しくなる。良い卵を選ぶのはもちろん、醤油を数滴垂らす代わりにごま油を一滴、刻み海苔と小ねぎを添えるだけで別物になる。柳刃は「贅沢は工夫で作る」と言わんばかりに、素材の持ち味を引き出す小ワザを使う。
忙しい合間の食事も、このワンプレートで満足感が得られ、心のスイッチが切り替わる。
料理は「思考のリセット」になる
偉そうに料理について語れるほど得意でもなければ経験もないのですが、この作品はただ面白いだけでなく生きる上でとても大切なことを学べた気がします。
料理の手順は単純なルーティンだが、その行為自体が思考の整理に役立つ。
包丁を持ち、刻み、火を見守る時間は、強制的に頭を今ここに戻す道具となります。柳刃の料理が示すのは、まさにここで、動作の一つひとつが「整える時間」になるということです。
私自身もこの作品を読んでから、たまに料理をしようと思うのですが、そんなときは頭の中の雑音が自然と整理されるのを感じます。
忙しいからこそ、ちょっとした手間で心が整うのです。
まとめ:小さな“侠気”を日常に
『侠飯』が伝えるのは、派手さではなく「誠実さの積み重ね」。
料理はその最も手が届きやすい実践でしょう。
今回紹介した三品はどれも難しくなくそこに「一手間」を加えるだけで、食卓と気分は確実に変わるはずです。
今日の献立を少しだけ丁寧にする
それが、40代の僕らにできるささやかな“侠気”ではないでしょうか。













