中山七里『テミスの剣』が問いかける「冤罪」を巡る「正義」のリアルと重さ【ネタバレなし】

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「中山七里の小説、どれから読めばいい?」と聞かれたら

ワタシは最近この『テミスの剣』を真っ先に勧めるようになりました。

中山七里さんと言えば、社会問題を巧みに取り入れたミステリーが持ち味の人気作家さんです。

その中でも今回は

「冤罪と正義」という深いテーマを真正面から描いた一冊。

読後に静かに心がざわつく、まさに「考えさせられる小説」なんです。

中山七里の傑作『テミスの剣 冤罪と警察のリアルさに震える社会派ミステリーを味わう

若手時代に逮捕した男は無実だったのか?

社会派ミステリーに驚愕の真実を仕掛けた傑作。

豪雨の夜の不動産業者殺し。

かなり強引な取調べで自白した青年は死刑判決を受け、自殺を遂げた。

だが5年後、取り調べを行った刑事・渡瀬は真犯人がいたことを知る。

隠蔽を図る警察組織の妨害の中、渡瀬はひとり事件を追うが、最後に待ち受ける真相は予想を超えるものだった!どんでん返しの帝王が司法の闇に挑む渾身のミステリ。

自分の信念が崩れ落ちるかもしれない恐怖

正義の剣が突き立てられた先に、想像を超える重い真実が待っていた。。

■ 『テミスの剣』が読者を惹きつける3つの理由

1. 冤罪の現場、リアルな描写が生々しい

銃撃戦や派手なアクションは一切ないけど、淡々とした捜査の積み重ねにリアルな臨場感があります。取り調べの描写や、警察内部の空気感、報道の反応などあまりに生々しい。

そして「こうやって冤罪は作られるんじゃないか」と思えるほどあっという間に進んでいく序盤の展開。ここで一気に胸が締め付けられます。

2. 主人公渡瀬の葛藤が見どころ

決して悪人ではなく、自らの正義を信じて職務をまっとうする主人公・渡瀬。

彼が冤罪だったと気がついたときの葛藤は壮絶です。これまで信じてきたものが崩れていく過程と、ここから組織に対して自分の正義を貫こうと闘いを挑むのですが、このスピーディーな展開は読み応え十分。

3. 「正義とは何か?」ラストの問いに何を想う?

ミステリーとしての完成度はもちろんですが、この作品の真価は「ラスト」です。

正義のあり方、人を裁くということ

自分だったらどうするんだろう?と考えさせられる重たい一冊。

タイトルにもある“テミス”は、ギリシャ神話の正義の女神。

彼女が持つ“剣”は、誰の手に握られるべきなのか──読者自身にその答えが委ねられる構成がとても印象的です。

主人公だけでなく、登場人物たち全員がみんなそれぞれの「正義」を持っているんですよね。

 まとめ:『テミスの剣』はこんな人におすすめ!

  • 中山七里作品の中でも、重厚なテーマに触れたい方
  • 社会派ミステリーが好きな人
  • 「冤罪とは?」「正義とは何か?」という問いに向き合ってみたい方

一つの社会問題に向き合った読み応えのある傑作小説です。

以前も中山七里さんの小説の感想を書いてますので、良かったぜひ。


テミスの剣 (文春文庫)

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