平山夢明の『デブを捨てに』ヤバイ話なのにこの爽快感は何?収録作のあらすじと感想。

またすごいタイトルをつけたもんです。『デブを捨てに』って。一体どんなヤバイ話なのか、読む前から気になってしょうがないし、この表紙といい今回もかなり良い感じですね。ジャケ買い、なんて言葉しばらく忘れてましたけどふとそんなことを思い出しました。

やっぱり最高

平山作品!

 

世の中には「何もこんなことを敢えて言わなくても良いのに」と思うことがあります。そして、それはいつだって醜くて、汚れていて、臭くて、理不尽で‥でもそれが現実だったりもします。

そんな暴かなくてもよいことをかなりきついブラックなユーモアで綴るのが平山夢明。

過去にも何度も絶賛してきましたが、今作『デブを捨てに』はどうだったのか?

過去記事

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平山夢明『デブを捨てに』登場人物みんな異常のヤバイ短編集を紹介します。

久しぶりの平山夢明作品。

今回もまた過剰な暴力と変態たちによる異質な世界が幕を開けます。

とはいえ、今作では過激さはちょっと控えめ。

でもキャラクターたちはかなり強烈です。

しかも登場人物たちはみんなこぞって大真面目に生きていて、そんな姿をブラックユーモアたっぷりな視点で描くからこの4つの物語はグロテスクで、それでいてどこか滑稽で‥

さてさて今回も変態劇場の幕開けです。

まずは収められているすべての物語のあらすじから紹介していきます。

あらすじ

「うでがでぶか」。借金まみれの俺は、わけのわからぬまま、“デブ”を、黄色いスパイダーに乗せて北へ向かった……表題作の「デブを捨てに」をはじめ、〈シュール〉な設定、乾いた〈ユーモア〉と、エッジの効いた〈表現〉で、〈最悪の状況〉に巻き込まれた男たちを、独特のスピード感あふれる文体で、泥沼のような日常を疾走するように描く。

どこへ行くのかわからないスリルをあなたにお届けする、全四編の平山夢明〈最悪劇場〉。これぞ、小説表現の極北を目指す著者の真骨頂。

「まあ、大変、買わなくちゃだわ」

 

「いんちき小僧」

腹が減って腹が減ってしかたのない俺は、コンビニでキャラメルひと箱をくすねるが、店の女に捕まった。女は、警察には突き出さず公園に連れて行くと、一発ぶん殴ったら許してやると言う。やがて、その様子を見ていた男から奇妙な提案をされる……。

変な男の提案により擬似家族を体験するも、実はその男は小さな息子と一緒にこっそり大麻を自作しふりさばいていた‥これがヤバイ人たちに見つかってしまい‥

「マミーボコボコ」

捨てた娘から三十五年ぶりに手紙をもらったおっさんに頼まれて、ついて行った先は、娘が嫁いだ大家族の家。そこでは、”ビックパヒー”なる父親以下、大家族の密着テレビ番組が収録中で……。

あきらかにビッグ・ダディのパロディ。異常な大家族による狂気の日常とそれを取り巻くテレビ製作側のクズっぷり。痛烈なまでのブラック・コメディ。

「顔が不自由で素敵な売女」

行きつけのバー「でべそ」で酎ハイ二杯を飲んで、いい気分になった俺は、公衆便所のような臭いのするヘルスの個室で、ハラミという夏の日のコーラフロートのような頭のブスに、とびきりのサービスを受けていた。

とびきり醜い女との出会い。そしてそれが退屈な日常をちょっとだけ充実させることになるのだが‥

「デブを捨てに」

借金の返済期限が来たが、金を返せなかった俺は、事務所につけていかれボコボコに締め上げられたあげく、「腕とデブ、どっちがいい」か選ばされる。俺は、よくわからず「デブ」のほうを選ぶが……。

借金返済を延長してもらう変わりに腕を折られるか、それともデブを捨てにいくかを選ばされた男。とんでもないデブと一緒に目的地までの珍道中が始まったのだが‥

 

『デブを捨てに』このイカれたロードムービーをどう読むか?

4つの物語が綴られた今作品は、登場人物がこれまたすべてまともじゃない。

これは例によって平山夢明作品にはよくあることなのですが、今回はいつにも増してその醜さ、グロテスクさが強調されているように思えます。

例えばマミーポコポコに登場するのはこれもう間違いなくビッグ・ダディの彼がモデルであろうことは読んだ人なら誰でも分かるように描かれています。

ここまで極端にキャラクターが誇張されたのはやはりこの物語全編を通じて流れているブラック・コメディ感の仕業でしょうか。滑稽だろ?グロいだろ?って。

どの物語にも共通するのは主人公がおかしなことに巻き込まれるということです。

表題作である「デブを捨てに」はまさにそのまんまで、巨大な醜女と一緒におかしな旅に出るはめになり、その道中で次第に心を通わせていく‥という典型的なロードムービー作品に仕上がっています。

とはいえそこは平山作品

ただの旅にはなりません。

そもそも目的はその巨大なデブの醜女を捨てにいく旅であり、その道中は狂気じみた大食いでお金を工面しながら進んでいくのです。

嘔吐あり、暴力ありの安定の平山劇場がちゃんと描かれているのでご安心ください。

この醜女が醜いけど頭も良いし、何より器量良し。

なんか今までの平山夢明の作品の中では比較的みんなわかりやすいキャラクターが多かった印象です。

まあ、もちろん

例によって映像化は難しいでしょうね‥

でぃすけのつぶやき

読み終わって最初に感じたことは

あれ?おかしい‥

なんだろうこの爽快感‥

あの名作『ダイナー』を彷彿とさせるこの読了後の爽快感。あのデブとろくでなしの旅が終わる時なんてちょっぴり感動すらしましたよ。

物語はみんな異常でおかしな短編集なのに

きっといつもより暴力シーンが少ないとか、キャラクターがみんなちょっと過剰に演出されているとか、普段よりも何かがちょっとずつ違うんだろうけど、この短編集は癖になります。

ただ、勧める人を間違えると

友達失う可能性もあるので

相変わらず、取り扱いにはお気をつけください。

 


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