ヤクザ映画を変えた『孤狼の血level2』前作との見事な対比を徹底考察。〈ネタバレ注意〉

本/映画/感想

レベル2って、LEVEL2って…

なんでこんなタイトル付けたかなーって半笑いだった自分を猛省しました。

この緊張感ヤバ過ぎます。

そしてこれはちょっとやりすぎです。だってもう仁義とかそういうの全部ぶっ壊れてますもん。

…そういえば、全部ぶっ壊れればいいんじゃーって叫んでますもんね。。

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ヤクザ映画というカテゴリーからはみ出したパニックムービー『孤狼の血LEVEL2』〈ネタバレ注意〉

東映が本気だした『孤狼の血』。続編が作られるまでヒットした理由は?

前回、ワタシは久しぶりに熱くなったヤクザ映画ということで『孤狼の血』の感想を綴りました。どうして熱くなったのか、昨今の情勢からヤクザ映画はヒットしないと言われていたのに何故ここまでヒットしたのか?などをネタバレしないように書いてみたつもりです。

実はあれを書いているときに既にこの続編を鑑賞していたので、今回のこの『レベル2』でまとめてしっかりと書いていこうと予定していました。

なにせ今回の続編はすごいです。

前作で作り上げたあのギラギラとしていながらも乾いた暴力の世界観。そこにはヤクザ映画特有のリアリティがあり、それによって登場人物たちの魅力がより輝いていたように思えます。

続編である今作は色々な意味でこの前作との対比を浮き上がらせています。

そして冒頭にも触れたように、そうした対比や前作との呪縛を文字通りぶっ壊してしまうことで物語はカタルシスを迎えます。

あらすじ

本作も前回から引き続き松坂桃李さん。ただし前作のようなフレッシュさは微塵もありません。ヤクザと警察組織を相手に奮闘していた大上(役所広司)の血を受け継ぎ、風貌もやり方まで似てきた広島県警呉原東署刑事二課の日岡秀一(松坂桃李)。

マル暴として広島の裏社会のバランスをうまく治めていたのだが、かつて彼が壊滅に追い込んだ呉原最大の暴力団「五十子会(いらこかい)」の残党・上林成浩(鈴木亮平)が刑務所から出所します。 

こいつがとんでもない悪魔でして、出所してすぐに上林が服役していた刑務所の看守の妹でピアノ教師をしている千晶(筧美和子)のもとを訪れ残虐なやり方で殺害。

日岡は広島県警本部からその捜査に招集され、定年間近の瀬島孝之(中村梅雀)とコンビを組むことになります。この上林の暴走がギリギリのところで保っていた広島の裏社会のバランスを崩していき、日岡はどんどん追い詰められていきます。

見どころと考察。こうして孤狼の血は受け継がれた。

具体的なストーリーについては、ここで敢えて語る必要はないでしょう。

このブログでは前作とこの『孤狼の血レベル2』とを対比することで得られる面白さ、見どころを自分なりに考察しながらまとめてみようと思います。

見どころ1 見事なまでのコントラスト

ワタシがたまたま1と2を続けてみたこともあるのですが、かなり丁寧に前作との対比を描いているなと感じました。

まずは伝説のマル暴・大上と今回の日岡です。

大上の風貌ははたから見たらヤクザと見分けがつかない出で立ちで、ものすごく貫禄とオーラを放っていました。今回の日岡も無精ひげにくわえタバコ、サングラスに大上のジッポライターという神器を受け継ぎ、ひょうひょうと裏社会を立ち回っています。

しかし貫禄という部分では全然出せておらず、見せかけのオーラが不安定さを覗かせます。

だいたい貫禄を出そうとするためには、大上のようにちょっと体格を大きくしたりするかと思いますが今回の日岡は相変わらずのシャープさが目立ちます。この対比が後の悲劇を予感させるうまい仕掛けになっていると思います。

また大上は一般人を命がけで守ることを信条にしていましたが、対する日岡は捜査のために送り込んだスパイを殺されてしまうなど、狼になりきれていない部分が描かれます。

日本映画史に残るヴィラン・上林と日岡

上林(鈴木亮平)というキャラクターがとにかく凄い。

恐らく本作の成功は彼の演技が支えたといっても過言ではありません。原作にはないオリジナルストーリーということもありますが、彼の悪魔のような無軌道感が半端ないんです。

上林が映ると心拍数が上がってしまいます。次はどんなことが起こってしまうのかと…このキャラクターについては最後に後述するとして、このヴィランの登場もまた日岡との対比を強く表現しています。

大上の血を受け継いだ日岡と五十子会会長・五十子正平(石橋蓮司)を親と慕っていた上林。

手段を問わず仲間だろうが血祭りにあげていく上林と、手段を問わない捜査で追いかける日岡。

実の親から酷い虐待を受けた結果親を殺害した上林。本作では日岡にも親が他界していたことが明かされており、両者とも実の親を失っていて、それぞれが慕っている親(大上と五十子正平)をも失っているという構図も明らかにされています。

日岡と瀬島(中村梅雀)

今回も形式上バディ物のような設定をされます。

行方不明者を探す捜査と既に被害者は殺害されている殺人事件の捜査。

それが日岡と瀬島という定年間際の刑事です。前回は大上に対してフレッシュな日岡を組ませましたが、今回はその反対。年老いたパッとしない刑事とコンビを組んで事件解決を目指します。

そして実はこの瀬島という刑事は公安の人間で、前回日岡が関わった尾谷組との手打ちとなった事件の証拠を掴もうと送り込まれた人間でした。

前回は日岡が大上の内偵のため送り込まれていましたが、今作でもにくい演出です。

さらに大上はその密偵を最初から見破っていて、最後には報告書に赤ペン先生をしてあげたほどの師匠っぷりを見せつけましたが、日岡はまんまと騙されてしまい自らポロポロと吐いてしまい、どんどん窮地に追い込まれていきます。

見どころ2 凶暴なドラマの描き方。

なんと言ってもこの作品は鈴木亮平さんの映画といっても良いと思います。彼が演じた上林の暴れ方はもはやモンスター映画、パニック映画に近いものがあります。

出所してきて早々に同じ組織の人間だろうが、一般人だろうが関係なく血祭りにあげ暴走していきます。特に過去のトラウマから「視線」に対して異常な執着を持つ上林。この眼球をえぐるやり方はかなりショッキングで、冒頭にこれを持ってくることで、これから起こる非常事態を見事に予感させます。

そしてこの暴走が容易に止められないことを観客が感じられるように、上林を後ろから撮るショットが多いです。これはただただ追いかけることしかできないという、ドラマを象徴しているような演出で、ラストで日岡と上林がしっかりと目を合わせ死闘を繰り広げたときに、初めて我々(観客)と日岡はこのモンスターを捕まえられたかのように、逆に妙な安心感すら覚えます。

だからワタシはラストに進めば進むほどほっとしていったのが印象的でした。

怪獣映画の怪獣と同じで、上林もまた何を考えているのかが見えない。ただこの世界を破壊するためだけに登場したキャラクターであり、裏社会の中にあった秩序や仁義も全部破壊されます。

残酷描写はより研ぎ澄まされ、もはやヤクザ映画というカテゴリーすら破壊した本作

ラストシーン

日岡は自分の中に受け継がれた「孤狼の血」をはっきりと感じています。

 

まだ観ていない人は是非シリーズ通して観て欲しいです。

さらに続編も決定してますからね。今から楽しみです。

 

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