映画『孤狼の血』の感想。続編が作られるまでヒットした理由は?【ネタバレなし】

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血なまぐさい抗争に惹かれること。

これはいわば平凡なサラリーマンがファンタジーの世界に浸りたい一種の現実逃避であって、だけどドラゴンとか魔法とかが登場してしまうほど現実から距離を取りたくないときにこそぴたっとはまる。

そんなギリギリのバイオレンスファンタジー劇場。

ゲーム・オブ・スローンズでは味わえないジャパニーズリアルファンタジーをご覧あれ。

果たしてこれはヤクザ映画の新しい人気シリーズとなるか?

映画『孤狼の血』を鑑賞しました。

任侠映画・ヤクザ映画というジャンルが日本の映画史の中で輝いた時代がありました。

有名所だと『仁義なき戦いシリーズ』があり北野武が『アウトレイジ』、『BROTHER』などで描く作品があります。どれも素晴らしい作品ではあるのですが、時代はそんなヤクザという存在を反社と名付け闇に葬りました。

今はもう、ヤクザ映画はヒットしない。

そんな逆風吹き荒れる状況の中、現れた本作。

正義とはなんじゃい。

東映の本気度を体感せよ。久しぶりにヒットしたヤクザ映画『孤狼の血』の感想!

暴力団関連の金融会社の社員が、謎の失踪を遂げた。新米刑事はベテラン刑事と組んで事件を追うが、常軌を逸した相棒の捜査に戸惑い、自らの信念が揺らぎ始める。

役所広司演じる大上と松坂桃李演じる日岡のいわゆるバディ物として捜査を開始するのですが、この先輩大上がとんでもない刑事。その風貌も警察とは思えない出で立ちで違法捜査も何のその。その下に県警本部から配属された新米刑事の日岡が配属されます。

構図としてはデンゼル・ワシントン主演の『トレーニングデイ』に近いものがあります。ただ日本の闇社会はもっとウェットで、独特ですが。

広島の港町・呉原市を舞台に地元の尾谷組と広島市を地盤にする五十子会という組織があり、対立していたわけですが、そんな中、呉原金融の経理士が行方不明になる事件が起きます。呉原金融というのは五十子会の下部組織の加古村組の息がかかったいわゆるフロント企業。

その加古村組と尾谷組との緊張感が高まっている状況で、このバディは呉原金融の経理士失踪事件を暴くことで両組織の抗争を止めようと画策します。

しかしその捜査方法がかなりダーティー。不法侵入に放火、時には拷問…

日岡はこの大上の捜査についていけないと、戸惑うばかり。

実は日岡は本部からこの大上の内偵をするというミッションが課されており、懇願に近いような報告を上げていたのでした。

しかし状況は次第に悪化していき全面抗争のタイムリミットが迫ります。

一縷の望みをかけて大上と日岡は経理士失踪事件の「ある証拠」を掴み、これで抗争を止められるかというときにマスコミからの大上の違法捜査についてのタレコミが入ります。

これで大上は自宅謹慎、捜査から外されてしまい尾谷組と加古村組との衝突が始まってしまいます。

事態の沈静化のため奔走する二人でしたが、ある日を境に大上の姿が消えます。

『孤狼の血』のみどころ。【ネタバレなし】

なんと言っても演者たちの演技がすごいです。

まずは役所広司さん。以前『渇き。』でもハチャメチャなダーティー元刑事を演じましたが、本作もそれに負けじとぶっ壊れてます。

ヤクザ相手にそれ以上の力で必死に抑え込もうとする姿は鬼気迫るものがあります。

映画『渇き。』と『不思議の国のアリス』モチーフになった事件や見どころなどもまとめて解説。

そしてフレッシュな松坂桃李さんは大上と過ごす時間によって成長していく様子をしっかり演じていたと思います。

また豪華すぎる共演者たちは圧巻です。江口洋介、竹野内豊といったいわゆるイケメン俳優たちがドスの効いた声で凄むんですから。絵的にも見応えのある作品。

物語は失踪事件を時間内に解決しなければいけない、というタイムリミット物を核にしながら、裏社会の抗争をギラギラと映し出します。仁義に翻弄される人間模様に加え、県警本部は何のために大上を内偵させたのか?などミステリーな要素もありラストまですごいテンションで観てしまいます。

映画『孤狼の血』が続編まで作られるまでにヒットした理由。

暴力団対策法が施行された今、かつてのようにヤクザ映画が大ヒットすることはなくなりました。

かつて任侠映画と言えば東映と言われていましたが、そうした時代背景もあって衰退。そこへ北野武がアウトレイジシリーズでヒットさせたもんだから、東映としてはなんとしてもこの作品、派手に仕上げたかったんだと思います。

そんなかつての作品たちに敬意を払っているように、ナレーションにサントラは素晴らしい仕上がりです。極道というテレビでは流せないような世界を描いていますが、これが我々にとってリアルなファンタジーだと思うんです。

映画って強いヒーローの活躍する姿を観て、映画館を出たときになんか自分まで強くなったような気がする。そういうのが映画の持つ本来の姿だと思っていて、本作にワタシはそれに近いものを感じました。

最近はやたらと多様性やらコンプライアンスを意識するもんだから女性も平等に活躍しなきゃいけないとか、過剰な暴力は描けないし、、絵だけがやたらと綺麗になった作品が多々ありますが

しっかりと男の世界を描いたことに、本作のヒットの理由があるように思います。

強い大人がいなくなった今、大上の姿を観て熱くなる若者がきっといるはずなんです。

暴力描写はきついものがありますが、東映が本気を出したなってのが伝わる作品です。


孤狼の血 「孤狼の血」シリーズ (角川文庫)

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