戦慄の映画『エクス・マキナ』考察。名作になりきれなかったたった1つの理由
静かに、美しい。
そして、とても怖い。
最近はやたらとAIとか人工知能とかに注目が集まっていますが、機械によって人間の仕事が奪われるっていうニュースにもあるようにいずれ人は機械にその主権を明け渡す日が来るのかもしれません。
『ターミネーター』のようにある意味分かりやすい形ではなく、静かにゆっくりと、だけど確実にその日が近づいているのかもしれません。
そんなちょっと怖い物語。
『エクス・マキナ』を鑑賞しました。
美しくも悲しい物語。『エクス・マキナ』を鑑賞。〈ネタバレ注意〉
第88回アカデミー賞では「視覚効果賞」を受賞したほど高い評価を受けた本作、確かに見惚れました。
撮り方もそうですが舞台、小道具全てが絶妙なセンス。人工知能エヴァの造形も素晴らしい。
なんか綺麗な絵をずっと眺めているような感覚に陥ってきます。
でもそんな呑気なこと言ってたら震えますよ、恐怖と悲しみで。
あらすじ
世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるという人工知能の不可思議な実験に協力することになるが……。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」「レヴェナント 蘇えりし者」のドーナル・グリーソンが主人公ケイレブを演じ、「リリーのすべて」のアリシア・ビカンダーが美しい女性型ロボットのエヴァに扮した。グリーソンと同じく「スター・ウォーズ フォースの覚醒」に出演したオスカー・アイザックがネイサン役を務めている。映画.comより引用
美しい映像と戦慄のシナリオ。
目を見張るのはやっぱりエヴァの造形でしょうか?
綺麗な顔は表情豊かなのに身体はほとんどスケルトン。中の機械の部分が丸見えです。
このデザイン素晴らしいですね。
ワタシの中で美しいロボットと言えばクリス・カニンガムが神の如き仕事をしたビョークの『All is Full of Love』のPV。さすがにこれを超えるインパクトはなかったものの、造形のオリジナリティ、デザインの美しさは素晴らしいです。
あとシンプルな舞台もセンスを感じます。
出てくる小道具は恐ろしく少ないのですがポロックの絵が飾ってある部屋とか、インテリアも最高。
こうした美しい舞台の上で、紡がれる戦慄のシナリオ。
この作品は視覚効果に注目が集まりがちですが、ちゃんとシナリオもすごいんです。
人工知能を純粋で女性経験なさそうな青年がテストするというストーリーですが、途中からこの青年ケイレブも実は機械なんじゃないか?とかネイサンは本当は何を企んでるのか?とかエヴァの狙いは?とか全てが巧妙に研ぎ澄まされていくんです。
よくあるサスペンスみたいにたくさんの情報、ヒントが複雑に絡み合って一つの答えに導かれるっていう流れではなくて、一つ一つの線をより細くピンと張り詰めていき、切れないように緊張感を持って辿っていくってイメージでしょうか。
シンプルだし、決して派手な展開はないんだけど静かに怖い物語が淡々と進んでいきます。
人工知能エヴァの恐怖
普段ワタシたちが当たり前のように使っている【ウェブ検索】
これって自分の嗜好、生活の情報をすべて丸裸に入力してるんだなと今さらながら実感しました。
今作のエヴァはまさにこの世界中の検索をもとに作られた知能です。
ケイレブとエヴァの会話はとてもスムーズで、むしろ微笑ましいとさえ思えるシーンもあったのですがこういうのもすべて計算。
無数に存在するパターン、ビッグデータの中からいかにケイレブを自分の味方にするのか?を計算していたのです。恐るべし人工知能。
美しい外見が余計に判断を狂わせていきます。
しかもそれすら計算。
そりゃ勝てないわけで。
劇中原爆を発明したオッペンハイマーの言葉を引用し「私は世界を滅ぼす死神となった」とにこやかに言い合う2人。
いやいや、まさに人工知能って存在は人間には到底理解出来ないし、扱うこともできないんじゃ?と震えながら思いました。
この作品が最高傑作…になれなかったたった1つの理由
でぃすけ、恥ずかしながら本作を「最高傑作!」と褒めちぎることがどうしてもできなかったんです。
たった一つの理由で。
それが
この男。ネイサンを演じるオスカー・アイザックという方。
明らかにスティーブ・ジョブズを意識しているんであろうキャラ。頭脳だけでなくこの密室劇の優位性を示すためにマッチョな肉体を持つこの男。
どんどんこの人に見えてきて…
せっかくいいこと言ってたり
深い考え方を語ったりしてるんですが…
「あるある言いたい~」って勝手に脳内再生されてしまって。
特に中盤でのダンスシーンで撃沈。
きっとこんな理由を挙げているのはワタシだけだとは思いますが…ビジュアルもストーリーも絶妙だったために非常に惜しい。。
でぃすけのつぶやき
近い将来、ワタシたちの生活はどんどん変わっていってAIはもっと普及して、機械と共存なんて言葉自体が死語になるくらいになってると思います。
すでにワタシたちが毎日使っているスマホにバックドアがあって国がそういった情報を集めている、なんてニュースもあったくらいです。
すでにどっかの山奥で人工知能を搭載したロボットたちがテストされているのかもしれません。
この作品が本当に戦慄なのは
この人工知能エヴァの真の狙いが見えないことです。
ターミネーターのように「スカイネットの反乱」みたいな核攻撃はある意味分かりやすい。
一体エヴァの狙いは何だったのか?
会話の中で
「ヒューマンウォッチをしたい」と話すシーンがありましたが、彼女(?)は人類を観察し何を想い、そして何をするのか?
きっと我々が思いもよらないような思考回路から人間が考えないようなことを考え、行動をするのでしょうか。
まさに神のごとき存在となるのか・・
ほんと考えれば考えるほど怖いな、この話。。