後味が悪いを通り越して逆に清々しい『ドッグヴィル』の衝撃的結末
世の中見なきゃ良かった、って思うことがあるもんです。
知らなきゃ良かった
見なきゃ良かった
結局怖いもの見たさって言葉もありますが、だいたいそういうのって見たら後悔するんですよね…
その衝撃の度合いにもよりますが、そういった後悔は決まってうんざりさせられるものです。
人間の愛しさと醜さと心強さと。映画『ドッグヴィル』の衝撃。《ネタバレ注意》
ラースフォントリアーという人間界でも割と悪魔寄りの映画監督がいます。
『奇跡の海』で切なすぎる愛を描きながらもその実は信仰と信頼を大いに揺さぶり、『ダンサーインザダーク』ではそのあまりの救いの無さにワタシは一言こう思いました。
見なきゃ良かった、と。
とにかくこの監督は人間の醜さをむき出しにし、そして物語を決して救わないまさに悪魔の所業の如く作品を撮るのです。
そりゃあ生身の人間であるワタシが地獄を覗き見るなんて恐れ多くて……え?
これ、現実か。
あらすじ
舞台は大恐慌時代のロッキー山脈の廃れた鉱山町ドッグヴィル(犬の町)。医者の息子トム(ベタニー)は偉大な作家となって人々に彼のすばらしい道徳を伝えることを夢見ていた。そこにギャングに追われたグレース(キッドマン)が逃げ込んでくる。トムは追われている理由をかたくなに口にしないグレースを受け入れ、かくまうことこそが道徳の実践だと確信し、町の人々にグレースの奉仕と引き換えに彼女をかくまうことを提案する。グレースは受け入れてもらうために必死で努力し、いつの日か町の人と心が通うようになる。しかし、住人の態度は次第に身勝手なエゴへと変貌していく。
ウィキペディアより引用
見どころポイント
先に言っておきますと、とにかくこの監督の作品を見て
「あー楽しかった!ディナーでも食べながらこの映画について語ろうよ!」
なんてことにはまずならないのでカップルで観るとか、デートで観るなんてことはなさらぬように。
ポイント1 奇想天外な舞台設定
まず目を奪われるのが「舞台」です。あらすじを読んだだけだと余計に混乱するかと思いますが、この作品はずっとこの舞台でいきます。
そうです。
地面に書かれた、ただの白線によって成立している村が舞台です。
だから村人たちはみんなむき出しに見えますが、物語の中ではそれはタブー。
このギリギリのラインで最後まで演じきった役者たちの魂に拍手です。
※ちなみにやはり役者たちも限界だったようでラースフォントリアー監督に対する不変不満をぶちまけまくるインタビュー兼メイキング集『ドッグヴィルの告白』もオススメです。
ポイント2 役者魂
先ほども触れましたが、とにかくこの状況の中この物語を最後まで作り上げた役者たちの演技は素晴らしいものがあります。
下手したらただの学芸会になってしまいそうですが、途中から見ているこちらも全然この奇抜な装置が気にならなくなります。
ほんと演技が上手いから成り立つという稀有な作品。
ポイント3 人間の醜さ
そしてやはり最大の見どころはラースフォントリアー監督の真骨頂後味の悪さ訂正線人間の本質を鋭く切り込む物語です。
最初は皆グレースとうまく付き合う方向に向かっているかと思いきや、ひょっとしたきっかけから人間のエゴが炸裂します。
グレースはそんな村人たちのエゴに徹底的に凌辱されていき、そして最後の壮絶な結末へと一気に加速していきます。ここからのカタルシスは壮絶です。
ポイント番外編 美しさ
訳あり逃亡美女グレース。これ演じるニコール・キッドマンがとにかく綺麗。
ここを見どころにあげてしまうのは男心。。
衝撃の結末。
この作品はこの結末の圧倒的なカタルシスが全てであると言っても過言ではないでしょう。
グレースの正体が明かされ、それまで彼女を蹂躙し続けてきた村人たちは一斉に人間の本性をさらけ出します。そしてそれでも容赦しないグレースの姿を見て喝采を挙げたワタシもまた、人間の醜い部分が剥き出しになっているという‥‥
でもなんだろう?
この爽快感‥
あとがき
人間とは本来不完全で未熟で醜くて…そんなどうしようもないことを隠すために宗教があったり愛や希望があったり…
そう、普段そんなこと考える必要もないことまで突き付けてくるラースフォントリアー監督。
世間様と一緒に夏が来たっ!って浮かれることが苦手な方、是非真逆のベクトルに沿ってダウニーな体験をこの映画でしてみては如何でしょうか?
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