映画『壬生義士伝』の感想。男泣き不可避なんだけど、物足りなさもある?【ネタバレなし】
もともと涙腺が弱いほうなので、お涙頂戴の感動を打ち出している作品を進んで観ることはないのですが、新選組関係ということで随分と泣かせてもらったこの作品。
久しぶりにもう一度観ようと思って鑑賞しましたが
やっぱり泣いちゃう。
新選組の中でも無名の隊士であった吉村貫一郎を主役に、ドラマチックに仕上げた本作。幕末という異常な時代の中で散っていった新選組。
もちろん浅田次郎の原作も読み終えた上で映画を堪能。
やっぱり泣いちゃうわけで。
今日はそんな漢な作品を紹介します。
男だったら一度は見ておけ。映画『壬生義士伝』で男泣き。
前置きはさておき、いきなりちょっと厳しいことを言うと新選組ファンでないと満足に楽しめないという悩ましい問題を抱えているんです。
構造上の問題なのか、映画化にあたりちょっと惜しい部分があるんです。
浅田次郎の同名小説を映像化した本作。原作は結構シビアに吉村貫一郎の故郷での暮らしが描かれていますが、映画版はそこまで酷さを追求していません。
つまり脱藩し故郷、家族を捨てて新選組に加わり、守銭奴としてバカにされることの説得力がないんです。だから新選組ファンは必死に吉村貫一郎像を本作に於いても重ねる作業が必要になります。
新選組というのはファンにとって自分の想像力で補完する対象であり、人それぞれの沖田総司がいて、斎藤一がいるんです。もちろん本作の主人公吉村貫一郎をここまで有名にした浅田次郎の原作あっての映像化ではありますが、本作はこの部分を少し軽んじてしまったか。。
明治と幕末をいったりきたりしながら回想の中で吉村の姿を浮かび上がらせるのですが、結局その背景をちゃんと描かないためにちゃんと感情移入が出来ないんです。
斎藤一とのやり取りがいくつか続くのですが、その結果としてすごい友情が芽生えるとかでもなく…時間配分にちょっと難ありな印象を受けてしまうのです。本来描くべきは吉村貫一郎の生い立ちであり、故郷での暮らしぶりなのです。幕末での暮らしっぷりではないのです。
と、少々厳しく言うのもワタシが新選組を愛するが故。
ちゃんと勝手に補完しながら号泣したわけで。
『壬生義士伝』のみどころ
のっけから少々厳しく書きましたが、本作の魅力もちゃんと書きますよ。
堺雅人さん演じる沖田総司はかっこいいし、しっかり活躍しているし浅葱色でない隊服は斬新だし、やっぱりラストのお涙頂戴で畳み掛けられれば泣いちゃうし。
最後の突撃シーンはなんだかんだ絵になります。
この絵を撮りたかったんだろうなーっていうのが伝わります。
そもそも吉村貫一郎なる人は実在したようですが、それがここまでドラマティックな生き方をした人なのかは不明。そこは浅田次郎氏の手腕が大きく、もっと言えばすべての新選組のキャラクターは子母澤寛という人がある程度イメージを造ってしまったことに起因します。
だからこの手の作品はやっぱり過剰にお涙頂戴で問題はありません。
もう少し泣かせることが出来たのに…というのが正直な感想ですが
新選組関係の作品の中でも感動系の本作
まだの人は一度観ておいても損はないでしょう。
やっぱり原作がおすすめ。