Radioheadの『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』全曲振り返りながら再考します。

ヘイル・トゥ・ザ・シーフ2/DISK本/映画/感想

今年2016年のサマーソニックに参戦決定した世界的人気バンドRadiohead 

彼らのアルバムの中でも、もっとも陰鬱で閉塞感漂う『Hail to the Thief』を勝手にあれこれ言いたくなりまして。たまたま聴いたら止められなくなりまして。


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ヘイル・トゥ・ザ・シーフ1/DISK

実は凄い作品なんじゃない?『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』Radioheadが放つ最も暗い闇。

『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』これはレディオヘッド6枚目のアルバムになります。発売同時2003年のワタシはまさにRadioheadにどハマりしている頃で前2作の強烈なインパクト、最高の音体験を味わったまま、まさにレディオピークを迎えたタイミングで届けられました。

しかし、この暗さ。

当時アメリカ合衆国大統領選挙にてブッシュ大統領への痛烈な批判がそのままアルバムタイトルになったという話は聞きましたが、この閉塞感。。『KID A』が可愛く感じます。。

 

では早速、ポイントごとにこのアルバムの再評価をしていきたいと思います。

2 + 2 = 5 (The Lukewarm.)

Radiohead史上最高に暗いイントロから幕開けです。シールドをプラグにぶっ挿すノイズ‥

最高です

続いて奏でられる究極に暗いアルペジオ。

意味深な歌詞が更に憂鬱な気分を高め、聴いててどんどん暗くなってくるのに謎の高揚感があります。

これは後ろでずっと脅迫観念のように鳴り続けているリズムによるものですが、なんか焦ります。

そしてピークはびこーーーっず!のシャウトからのサビ。

後はもう堰を切ったように叫ぶ叫ぶ。

あのUKギターロックシーンを担う、ともてはやされた若かりし彼らの姿はそこにはありません。

タイトルはおそらくジョージ・オーウェルの『1984』に出てくる例のアレですね。いきなりこんなテーマをぶつけてくるあたり、このアルバムが如何にメッセージ性の強い作品かが分かります。

グローバリズムへの反感、怒り

何かに取り憑かれ暴れているようです。

2+2が5であるということを信じ込まされ、それを受け入れ、できるだけ多くの人を不幸にしようと頑張っている

こんな曲から始まるこのアルバムが、つまらないワケないんです。

Sit down. Stand up. (Snakes & Ladders.)

ロックとデジタルの融合

なんて言葉も今となっては使い古された過去の遺物となり果てました。

しかし当時Radioheadが鳴らした『Kid A』はそれこそロック音楽もデジタル音楽も飲み込んでしまうほどの衝撃があったのです。

さて、二曲目はそのデジタルとアナログとの使い方が絶品なミニマル構成の楽曲です。

徐々に音数が増していき、ある瞬間をピークにそれまで必死に抑圧していた感情をむき出しにするこのスタイル。

当時から鳥肌もんでしたが、、今聴いてもヤバいですね。

まったく余談ですが、昔この曲がカラオケに入ってて、友達と酔っぱらっては良く歌ってましたが…

用意してあるカラオケにも驚きですが、選曲する方にも責任ありです。

今考えるとこっちのほうが鳥肌もんですね。

Sail to the Moon. (Brush the Cobwebs Out of the Sky.)

美しい曲。このピアノの音が好きです。

ワタシはライブで観ましたが、この曲はかなり印象的でした。丁度夕暮れの光が差し込んできて、決して万全の演奏ではなかったのにとても美しい光景が目の前に広がりました。

トム・ヨークの声はピアノのほうが映える。

そんなことを思わせる雰囲気ある一曲です。三曲目にしてやっと落ち着かせてくれます。

なんでもこの曲は息子さんのために作られたようです。

ワタシも娘のためにバラードを作ろうかな。。

Backdrifts. (Honeymoon is Over.)

リズムのテンションとは裏腹にトムの声は何かに押さえつけられているかのような落ち着き方。

そしてこのアルバムの中でもっとも他のメンバーが何をやっているのか気になる曲。。

きっとこの手のやり方を経験してトムはソロワークへ移行したんだなと想像出来ます。

嫌いじゃないけど、聴くまで存在を忘れてしまうような、そんな悩ましさ。

この曲がどうしても聴きたくてこのアルバムを探す‥ってことはないかな。。

ただ後ろのアレンジは結構ツボで、当時はこの浮遊感のある音を参考にしたものです。


ヘイル・トゥ・ザ・シーフ2/DISK

どうでしょう?まだ前半の4曲です。

なのにこの密度

そしてこの暗さ

全14曲、1時間近くある今作はレディオヘッドの作品の中でもかなり長いモノになります。

果たして最後までこの暗さに耐えられるのか?

 


Go to Sleep. (Little Man Being Erased.)

やっぱりギターの使い方は絶妙

レディオヘッドと言えばギター・バンドです。『You』で魅せた3本ギターでゴリゴリと迫ってくるあの迫力をもう一度、、話が逸れましたが、そんな彼らのギターワークが聴き応え充分のこの曲

トム・ヨークってギターも上手なんですよね。

そしてその裏でやりたい放題のジョニー

この図式が好きです。

 

Where I End and You Begin. (The Sky Is Falling In.)

ベースのリフとスネアパターンとの掛け合いが面白いこの曲。

しかしワタシはこの曲がライブでかなりグダグダになっていたことをいつも思い出しては微笑んでしまいます。

久しぶりのリズム楽器隊の出番‥

腕の見せ所なはずの楽曲なはずですが、練習不足でしょうか?それとも演奏があまりに久しぶりすぎて慌てちゃったんでしょうか。

曲はアルバムのコンセントに従ったミニマルな作りで、とにかくベースが肝。

We Suck Young Blood. (Your Time Is Up.)

これまたかなり暗い曲

もうここまで来るとある程度の暗さには慣れてきたはずですが、この曲を聴くとまだまだ底ではないのだと思い知らされます。かなりスローなテンポですが中盤突然やってくる展開。。

聴く者を驚かすためだけにあるような突然の展開

これ自分がどのパートだったとしてもライブだったら絶対入り損ねる自信があります。

毎回ドキドキしながら聴きます。もう一回来るの?来ないの?って

で、こないのね。

The Gloaming. (Softly Open our Mouths in the Cold.)

実はこのアルバム、本当はこのThe Gloamingってタイトルになる予定だったようです。それが政治的なメッセージも込めて『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』に最終的になったようですが、それだけにこの曲は結構凝った感じがします。

色んな電子音が重なり合いながら徐々にテンションをあげられていきます。

これライブバージョンだとかなりカッコイイんです。

トムのダンスも含めて、このアレンジは必聴です。

 

There There. (The Boney King of Nowhere.)

このアルバムからシングルカットもされ、かなり知名度も高いこの楽曲。

たくさんのタムタムを無心に叩くメンバーたちの姿は最初見た時に衝撃でした。特にエドの表情は最高です。(まったく音とは関係ない話ですが‥)

しかしこの曲の完成度の高さと言ったらもう言うことありません。

実際初めて『パラノイド・アンドロイド』を聴いた時以来の衝撃がありました。

この強迫観念に取り憑かれたようなリズムがすごい迫力。さらに繊細なギターワーク

これ以降レディオヘッドのライブでは毎回セットリストに加わる定番曲になったようです。

納得

I Will. (No Man’s Land.)

箸休め的な‥?

なんて思ってましたが、短い曲なのであっという間に過ぎてしまいます。

でも歌詞は結構メッセージ性が強く、トム本人も「もっとも怒りに満ちた曲」と振り返っています。

ゆったりと、穏やかに怒りを表現するトムの奇才っぷりに尽きますね。

暗く、音数が多い中で突然の静寂

特に直前の『ゼアゼア』がすごいエネルギーで迫ってくるのでこの流れは心地よい

A Punchup at a Wedding. (No no no no no no no no.)

これまたミニマルな構成でベースのリフとノイズというこのアルバムの色が濃く反映されてます。

ボーカルのメロディーラインはしっかりとしてて思わず鼻歌しちゃいそうになります。

上機嫌で思わず口ずさむ曲に相応しいのかどうかは疑問が残りますが‥

Myxomatosis. (Judge, Jury & Executioner.)

かなりファジーな音でベースラインが常に下降していく

6曲目のWhere I End and You Begin. でもそうでしたがベースとドラムの兼ね合いは音楽においてかなり重要なことなんですね。

タイトルの『Myxomatosis』とはなんなのか気になって調べてみたら

ウサギが感染する死亡率ほぼ100%の病気、粘液腫症のこと。

らしいです。

この歪んだ音と跳ねたドラムが面白い楽曲

強いて言えばもっと超絶なドラマーが派手にやっているセッションを聴いてみたい

Scatterbrain. (As Dead as Leaves.)

これまた非常に美しい曲です。

トム・ヨーク節と言いますか、なんとも不思議なメロディーなのにとても美しい。きれいなだけでなく、どことなくダークな感じすら漂わせる絶妙なバランス感覚

これほど理論云々では曲は書けないということを思い知らせてくれる曲も珍しいですね。

散々持ち上げといてなんですが

これ、ビョークが歌ったらもっと良い曲だろうなーなんて思ってしまいました。

A Wolf at the Door. (It Girl. Rag Doll.)

ラストを飾るのはこのアルバムに相応しいこの暗さ。

こんなにも悲壮感というか、なんと言いますか

最後まで

 

暗いのかっ!

 

徹底してます。さすがです。


あとがき

如何でしたでしょうか。

正直レディオヘッドの作品の中ではあまり目立つことなかった本作ですが

改めて聴いてみるとこれが非常に面白い。

かなり暗いし、ちょっとどころじゃない閉塞感が漂っていますが

それを承知の上でもう一度聴いてみるととても完成度の高い作品だということが分かります。

ちょっと長尺ではありますが。

最初はあまりの暗さにちょっと敬遠してましたが、今後ちょくちょくワタシのお気に入りリストに加えていこうと思います。

まだ聴いてないって人は是非この暗さに浸かってみて下さい。

もう聴いたって人も、この暗さを久しぶりに堪能して下さい。

 


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コメント

  1. […] Radioheadの『ヘイル・トゥ・ザ・シーフ』を全曲解説 […]

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