アマゾンプライムで見れる映画『燃えよ剣』はいまいち?辛口レビュー!

movie, 新選組

ファンの間では聖典として崇められている子母澤寛氏の『新選組始末記』と並び

今も君臨し続ける不朽の名作『燃えよ剣』がついに映画化。

新選組の価値を一気に高めたといっても過言ではないこの名作を『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』といったいわゆる感動系から『ファブル』のようなガチアクションをこなし、今やアクション俳優と進化した岡田准一氏が土方歳三を演じるとあって、ずっと注目していました。

ようやくというか、ついにというかとにかくアマゾンプライムに登場したんで早速鑑賞。

感想をつらつらと語らせてもらいませう。

 


燃えよ剣

ついにアマゾンプライムに登場した『燃えよ剣』。ファンだけに辛口レビュースタート!

まだ観ていないという方に先に言っておきますと、「原作は読みましたか?」

「はい」の人はそのまま映画鑑賞に進みましょう。

「いいえ」の人は残念ですが、先に原作を読みましょう。

もしくは新撰組について基礎知識があれば、鑑賞に進んでもらって大丈夫ですが、何もわからないまま岡田准一を眺めたいという動悸だとかなりヘビーな映画体験になります。

この理由は後ほどたっぷり語ります。

あらすじ

新選組副長・土方歳三の生涯を描き、過去に映画化、ドラマ化もされてきた司馬遼太郎の歴史小説を、「関ヶ原」の原田眞人監督&岡田准一主演の再タッグで新たに映画化。江戸時代末期。黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。武州多摩の農家に生まれた土方歳三は「武士になりたい」という思いで、近藤勇、沖田総司ら同志とともに京都へ向かう。芹沢鴨を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが……。土方歳三役の岡田のほか、土方と生涯愛を貫くお雪役を柴咲コウ、近藤勇役を鈴木亮平、沖田総司役を山田涼介、芹沢鴨役を伊藤英明がそれぞれ演じる。映画.comより引用

岡田准一主演!『燃えよ剣』が盛り上がりに欠ける理由。

岡田准一氏演じる土方歳三はカッコいいし、鈴木亮平の近藤勇もまた絵になる。『孤狼の血』のあの邪悪さがなくてホッとしました。。

このコンビは実写新撰組作品の中ではかなり「絵になる」ので、完成度は高いんじゃないでしょうか?

※とはいえドラマ化された三谷幸喜版のキャスティングを超えるまでにはないですが。

しかし、絵になることがそのまま作品の出来もイコールになるとは限りません。今回は見事にそのパターンが当てはまり、観ながら悶々としてしまったのでした。

もともとあの原作を映画化するのは難しい。

新撰組を描く、ということはあの複雑な時代背景の説明がどうしても必要であり、さらには(嘘かまことか、)隊士たちの豊富なエピソードがあり、悲劇的な結末に向けカタルシスを起こさせる必要があります。

それを通常の映画として表現するには圧倒的に尺が足りないのです。

これまでにもたくさんの新撰組を題材とした映画は存在しますが、結局三谷幸喜監督のNHK大河版が強いのはそこに理由があります。

映画と違いドラマはしっかりと時間をかけて描くことが可能です。

新撰組誕生の理由も、トシと近藤勇との絆も、隊士たちのエピソードも。

これを映画の尺で描くには限界があります。

それゆえに浅田次郎原作『壬生義士伝』は1人の隊士だけに焦点を当てて感動作品に持っていきました。

キャスティングの微妙さ。

先に述べた通り、近藤勇・土方歳三コンビは絵になります。そして新撰組物としてはある意味極めて重要なポジションである沖田総司はとても良かったと思います。山田涼介氏が醸し出す儚さ、無邪気さは原作に忠実で印象的でした。

ただ他のキャスティングがどうも絶妙というか微妙。

新撰組はそれぞれ「推し」のキャラがいるわけで、それぞれのキャラクターたちの個性がまるで立っていない。

敢えてそうしている節はありますが、原田・藤堂・斎藤一などの影は薄く、密偵の山崎が謎に際立ってましたがキーマンとなる芹沢や伊東ですらあまり残っていない。それでいて柄本明が突然店主として登場したり…

そしてヒロインを演じた柴咲コウさん。

これも原作を再現する上では登場させないわけにはいかないんでしょうが、この時間の余裕がない中で恋愛まで描くのは不可能に近いかと。

あれもこれもはやれないのは、ファンとしても充分理解できます。

ただどのエピソードもあまりにもあっけなく進んでいくもんだからはっきり言って

「何も印象に残らない」んです。

ダイジェスト・新撰組として

この原作を映画化する、という目的に対しては本作のように編集に次ぐ編集で見せたいシーンをしっかり描くことで果たせるのですが、それは「本編」を知っているという前提の上で成り立つのです。

だからこそ、この名作を映画化したのだ、と言われればそれまでですが、それにしてはこのダイジェスト版の印象の軽薄さが気になります。

何もかもが中途半端で。。

岡田准一『燃えよ剣』の見どころポイント

ただ、新撰組ファンとしてこのまま辛口レビューを投げるだけではいけません。

この作品の良かったところを最後に振り返ります。

土方歳三の歩き方

序盤でぴょこぴょこと飛ぶような姿勢で早歩きをする姿は、これまであまり描かれてこなかったかと思います。意外と斬新でした。

隊服2種類

一般的に広く知れ渡るあの浅葱色の隊服。

この作品では芹沢一派とのやり取りを経て全員が全員必ず着用しないという見せ方はこれまでになかったなと。

時代劇的な一騎打ちの排除

あるにはあるんですよ、土方と人斬り以蔵との決闘とか。だけどよくある長いこと見合ってキンキンとやり合う一騎打ちの描写が少ないのがかえってリアルでした。池田屋の乱闘も文字通り乱闘。運動会の騎馬戦のようにわちゃわちゃしてる感じと、刀がぶつかったときの火花や血しぶきが程よく映るのが、今っぽくてリアルでした。


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